日本プロセスワークセンター教員
松村 憲野元 義久
フロイトやユングにも代表される深層心理学の流れをくみながら、米国の心理学者ミンデルによって創始された「プロセスワーク」。「プロセス指向心理学」とも呼ばれ、対話によって自身の無意識が与える心身への影響と向き合い、より良い人間性や社会との関係性を実現させるものとして注目されています。そのトップランナーの一人である松村憲氏をお迎えしての対談を前後編でお届けします。前編では、プロセスワークの概念や社会的価値、そして組織への活用の可能性などについて伺いました。
フレームを知らなければ「多面的・多層的に組織を見よう」とか、「語られない言葉から思い込みに気づこう」なんて言わないですもんね。
プロセスワークはとらえどころなく見られてしまう傾向があるので、あえて構造化は意識しています。だから右脳的に見えて、実は左脳もバリバリ使ってるんです(笑)。フレームに基づいて言語化するというのは人の叡智の1つで、他者との共有もしやすい。でも、捉われすぎるのも人間なので、身体性や言語化しにくい感情に立ち戻ってバランスを取ることが大切だということですね。
そう、「時代や世界、社会が何を求めているか」を意識することは、プロセスワークの理論モデルで非常に重要な部分です。人は誰しも小さな存在で、好き嫌いも言語の壁もあるけれど、それはあくまで表面。根の部分はもっと大きなものにつながり、動かされ、逆に一人ひとりが相当な影響力で世界に関わっています。ただ、みんな無意識なので、「アウェアネス=意識化・気づき」が重要だと訴えているわけです。
現実は「コンセンサスリアリティ=合意上の現実」だけではありません。たとえば、人生の多くは必ずしも「こうなりたい」と願ってきたわけではなく、意識しないことに影響を受けてきています。先程、私との出会いを”ご縁”とおっしゃったのもそれですよね。組織も、誰もが「こうしたい」と思っていたとしても、その通りにいかないことも多い。それは頭で捉えている現実だけでなく、個々人が根ざしている深層のフィールドから影響を受けているからなんです。
撮影協力:重要文化財 自由学園明日館
(株)BLUE JIGEN代表取締役、バランスト・グロース・コンサルティング株式会社取締役、日本プロセスワークセンター教員、認定プロセスワーカー、国際コーチング連盟認定PCC
プロセスワーク理論を活用した組織開発コンサルティングやエグゼクティブコーチングの日本でのパイオニア。組織文化の変容や、組織における人間関係、葛藤解決などを得意領域とする。著書に『日本一わかりやすいマインドフルネス瞑想』、訳書にアーノルド・ミンデル著『対立を歓迎するリーダーシップ』『プロセスマインド』などがある。