日本プロセスワークセンター教員
松村 憲野元 義久
世代や価値観の変化が生む組織内の軋轢を解消し、VUCAの時代にも生き残れる、しなやかで強い組織をつくるにはどうしたらいいのでしょうか。後編では、その問いの答えとして、対立する同士の対話を通じて同じフィールドに融合させる、具体的なプロセスワークの活用場面を紹介します。さらに松村憲氏との対談は、組織を超えて、世界や社会の課題解決に向けたプロセスワークの体系「ワールドワーク」の可能性にも触れていきます。
私も危うさを感じています。これまでは同じ空間で過ごすことで暗黙にコンテクストが共有されてきましたが、リモートコミュニケーションではそれが脆くなる。共有できなくなった途端に空中分解する可能性があります。大事なのは「私たちをつないでいるものは何か?」という問いです。ここに気づいている組織は「つながりたい」「共有したい」という欲求を成就させる工夫をしています。だから、リモートという新しい選択肢が増えたのは悪いことではないでしょう。手段よりも「物語やコンテクストを軽んじていないか」「本音を話せているか」が重要です。
ですから、もし組織の上下で齟齬があるなら、まず経営層にアプローチできるといいですね。中間層からのアプローチだと手応えはあっても全体への変革を仕掛けるときには軋轢も大きい。経営層が一枚岩になれれば、比較的少ないパワーで変革を起こすことができます。
パワーを濫用して”教え込む”より、何が必要か”気づかせる”方がパフォーマンスは上がるというのが実証されているんですね。
ここは多くのリーダーの逡巡ポイントだと思います。空気が薄くなると、自分の答を“教え込む”ことに焦ってしまう傾向が見受けられます。でも、“気づかせる”アプローチを織り交ぜられれば、一段上のリーダーシップが発揮できる。私たちも自覚的に、”教える”ティーチングやコンサルティングアプローチだけでなく、”気づかせる”コーチングやファシリテーションというスタイルを選んで提供しています。
コーチとして見れば、野元さんの自己一致度は高まってきていると思います。真面目な方なので、足りないという意識が成長の動力になって努力されてきたと思うのですが、「足りないモデル」になると「できなかった自分」も許せない。成長の喜びを感じつつ、「手放す」ことも大切です。
そして、「足りないという事実」と「足りない人」の評価を分けることも重要です。基本的に人は成長欲求があって、足りない部分を的確に指摘されたら頑張りたい人は多いし、求めているんですよね。たとえば、アイドルグループ「niziu」のプロデューサーのY.J.Park氏は、厳しいけれど決して存在否定をしない。フィードバックが的確で、そこを頑張れば一段上がれる実感があるので、若い人にも響くし信頼されているわけです。
撮影協力:重要文化財 自由学園明日館
(株)BLUE JIGEN代表取締役、バランスト・グロース・コンサルティング株式会社取締役、日本プロセスワークセンター教員、認定プロセスワーカー、国際コーチング連盟認定PCC
プロセスワーク理論を活用した組織開発コンサルティングやエグゼクティブコーチングの日本でのパイオニア。組織文化の変容や、組織における人間関係、葛藤解決などを得意領域とする。著書に『日本一わかりやすいマインドフルネス瞑想』、訳書にアーノルド・ミンデル著『対立を歓迎するリーダーシップ』『プロセスマインド』などがある。