CASE #12 / 学校法人佐々木学園

ファミリービジネス承継承継を機に温故知新の“MVV経営”を推進、
自ら考え・行動する自律型組織を目指す

HOMECASE学校法人佐々木学園

お話を伺ったみなさん

写真左より

  • 米山 和伸氏
    学校法人佐々木学園
    事務局次長
  • 畠山 知代美氏
    学校法人佐々木学園
    東京総合美容専門学校 学校長
  • 佐々木 由氏
    学校法人佐々木学園
    理事長  

学校法人佐々木学園は、東京総合美容専門学校(TSBS)、東京グローバルビジネス専門学校(TGB)を運営し、「学生一人ひとりの夢の実現」を目標に、丁寧な教育・技術指導に加え、就職支援にも力を入れています。少子化などにより学校経営が厳しくなる中で、競争力を高めるために組織強化に取り組み、2022年4月に人事制度を刷新し、2023年7月に大胆な組織再編を行いました。

一連のプロジェクトには、婚家の家業を継いで理事長となられた佐々木由さんをはじめ、TSBS学校長の畠山知代美さん、事務局次長の米山和伸さんら幹部、事務方・先生方も参画。図らずも会社承継と並行して実施されたプロジェクトの経緯とともに、新人事制度施行や組織再編の変化、今後の展望などについて伺いました。

厳しい経営環境を乗り切る「自律的な組織」の実現を目指して

野元
佐々木学園には70年の歴史があります。佐々木さんは創業家の娘婿として経営に携わってこられましたが、教育事業かつ家族経営の組織ということもあり、会社承継には難しさもおありになったのではないでしょうか。
佐々木
前理事長の在籍期間は経営に深く関与することはありませんでした。2019年に設立した東京グローバルビジネス専門学校には、設立者・学校長として責任を負っていましたが、人事制度改革やその後の組織再編を具体的に構想するようになったのは、コロナ禍以降のことです。まもなく70年という歴史ある学園を承継し、存続・発展させることにはプレッシャーを感じ、気負いもありましたね。

学校法人佐々木学園 理事長 佐々木由さん

学校法人佐々木学園 理事長 佐々木 由氏

水田
私たちにお声がけいただいたのは、どのような思いからでしょうか。
佐々木
コロナがきっかけでしたが、少子化など社会情勢の変化で学校の経営環境が厳しくなる中で、以前から自分なりに考えていたこともあり、ある程度の青写真はできていました。しかし、現場は忙しく、先生も「教えること」に注力していたこともあり、事業や経営という視点を持ちにくい状況にありました。そこに私が描いた理想を押し付けても、応えてもらうことは難しかったでしょう。人事制度改革の本質的な目的は、そこに関わるメンバーが「佐々木学園として何を大切にしていくのか」を腹の底から理解し、それを“自分ごと”として実践するようになることでした。ブリコルールさんから、「人事制度づくりの前に、プロジェクトメンバーで礎となる経営理念(ミッション・ビジョン・バリュー:MVV)の整理を行いましょう」と提案をいただいたのは、視界を揃えるためにも良かったと思います。
水田
プロジェクトのスタート時は、ビジネスビジョンキャンバスというフレームワークを活用し、事業の今と未来について解像度を上げる議論を積み重ね、そこから浮かび上がってきた要素をMVVとして整理しました。5回×3時間程度の時間をかけましたが、今はどんな思いですか。
米山
もともとあった「建学の精神」や「教育方針」と、根本ではつながった要素が出てくるな、と感心した覚えがあります。経営理念というとちょっと高いところにある印象がありましたが、自分たちが「語っていいんだ」「仕事に活かせるものなんだ」という感覚を得られたのが大きかったですね。まとめた内容を書いてデスクに置いたり、朝礼で立ち返るポイントにしたりして、以前よりも今のほうが実感があるというか、身近な存在になりました。

学校法人佐々木学園 事務局次長 米山和伸さん

学校法人佐々木学園 事務局次長 米山 和伸氏

畠山
確かにMVVはある程度抽象的な言葉になりますが、それを噛み砕いて具体的な言葉で説明したり、語り合ったりすることで、特にベテランの先生方ほど、自分が今まで大事にしてきたこととリンクしていることを発見されることが多かったです。「朝から欠席している生徒に電話する」という行動が、当校の理念と結びついているなんて、なかなか感じる機会はないですからね。当時は学年責任者で現役の先生だったこともあり、「私みたいな先生が経営理念の話し合いに参加していいのかしら」と思っていたのですが、「そういうことか」と腹落ち感がありました。

学校法人佐々木学園 東京総合美容専門学校 学校長 畠山知代美さん

学校法人佐々木学園 東京総合美容専門学校 学校長 畠山 知代美氏

米山
中途で入ったばかりのメンバーもいましたし、TGBとTSBSのメンバーが一緒にという手法も新鮮でしたね。さらにMVVの言葉が具体的になっただけでなく、定量目標も具体的に置いてみたことでリアリティが生まれました。MVVに紐づいた目標として、たとえば「留学生の応募数」「学生の在籍率」「オープンキャンパス参加者の入学率」というように可視化したことで、職員や先生が「自分に何ができるのか」を具体的に考えやすくなったように思います。

人事制度づくりを通じて、ミッション・ビジョン・バリューを再確認

野元
MVVの整理に続いて、2021年6月から人事制度構築のフェーズに移行しました。その時のお気持ちはいかがでしたか。
畠山
MVVの整理については、私が現場で感じていたことを言語化・顕在化でき、それを出し合って共有するものとして、とても興味深いものでした。しかし、人事制度となると少し荷が重い気持ちでした。特に私の立場では、どうしても教員の評価のことが思い浮び、「本当にそれができるのか?」という感じのスタートでしたね。
水田
そんな畠山さんでしたが、新制度をリリースして最初のメンバーとの面談が終わった直後に、「期初の面談である程度の目標をすり合わせておかないと、後の振り返り評価が難しくなるのでは?」という問い合わせをいただいたことを鮮明に覚えています。教員の評価はやはり難しいよね、と新制度の運用を適当に流すのではなく、目的をぶらすことなく真摯に取り組もうとされていることを感じました。

ブリコルール 水田

畠山
制度づくりを進めるうちに、MVVがどのように評価に反映されているのかがわかり、さらに評価者が上から目線の“判定者”ではなく、役割としてフラットな“伴走者”であり“支援者”であると理解してから、楽しみながら制度づくりに参加するようになったことが大きいと思います。
米山
私はMVVに紐づく評価を、どう実践的に等級や報酬などに反映させるのか、“つなぎこみ”でいろいろと悩みました。また、評点の評価符号への接続の仕方、昇給額の調整の考え方、評価活動と事業活動のバランスのとり方など、ブリコルールさんにご相談しながら運用実務に落とし込めたのは本当に助かりました。べき論だけでなく、豊富な経験や知見で現場に即したフォローをいただけたのはありがたかったですね。
水田
私たちも質問があって初めてアドバイスできることも多いので、遠慮なくご相談いただくことが大事だと思います。2022年4月の制度施行から半年後には、相談や質問でなく、「半年サイクルを1年サイクルにしました」などの報告になってきて、本格的な自走が始まったことを実感しました。また、管理系の評価が職務特性上、「3=期待通り」に集まりがちなことを受けて、「どうすれば4や5を取れるのかを、上司―部下で話し合うようになった」と伺って、本当に生きた制度になってきたとも思いました。
米山
営業職は売上数字など明確な指標がありますが、教職および管理系は難しいですよね。そこで、どうしたら評価が上がるのか、組織や事業の課題解決を軸に定性指標として示すようにしたんです。今年はさらにバージョンアップして、期初から一人ひとりが重要で、かつ達成が難しい目標を1〜3つ定め、それをクリアしたら評価が上がるという仕組みにしています。
畠山
私が一番ビビットに反応があったと感じたのは、若いメンバーたちです。教員は1年間の流れがあるので、それを繰り返すうちにベテランは慣れてしまいがちですが、若い人たちは辞令式で昇進する人を「目指すべきロールモデル」として新鮮な思いで見ている。そして、それが評価と結びついていることから、「こうすれば評価される」ということが明確になり、それを自身の具体的な目標として認識するようになったと思います。
野元
やはり畠山さんは、人の成長が自分の喜びにもつながるという、根っからの教育者なのかもしれませんね。米山さんからは、表面的な整理にとどまらず、制度づくりや運用を通してMVVの本質を理解し、具体的な行動指針に落とし込もうとされてきたことが大変よくわかります。

学校別から機能別の組織へ、再編を機に現場主体の動きが活性化

野元
新しい人事制度を導入し、両校で制度を運用してなじんだところで2023年7月より学校別に縦割りだった組織を再編し、「学生支援」や「入試業務」などの機能や役割ごとに横ぐしを通す現在の形へと移行されてきました。人事チームの責任者となった米山さん、教務関係・事務関係の責任者の松原さんがプロジェクトの牽引役として活躍されました。

ブリコルール 野元

米山
組織編成については、佐々木から「自律的に動ける組織にしてほしい」という希望を聞いており、松原が用意してくれたチーム制の組織図5パターンをベースに議論していきました。最初のミーティングは居酒屋だったんですが、喧々諤々と意見を交換しました。その後、他のメンバーも巻き込みながら議論を重ね、機能別を基本軸にしながら、課題別のプロジェクトチームを組織横断で設置する「マトリクス組織」が最適という結論に至り、佐々木に提案したわけです。
畠山
TSBSは歴史ある組織でもあり、学校別組織ではなく機能別組織というのも驚きですし、さらにそこにプロジェクトチームも存在するというのは、一瞬固まる感じはありました。「人事」などの機能組織と、「魅力づくり」などのプロジェクトチームができると聞いて、「誰とどんなことをやるのか」、「上司はどうなるのか」など、不安がる人が多かったですね。ただミーティングや具体的な活動を続けるうちに慣れてきて、言いたいことを言い合う雰囲気ができてきたので、大丈夫だろうと思いました。
米山
現在、たとえば「魅力づくりチーム」では、「オープンキャンパス」や「電子黒板を使った授業」などの複数のアジェンダが進行中です。事務方・先生方それぞれの立場から様々な意見が出て、目的なども共有するので行動が速いですね。それまで担当が一人で奮闘していたのが、いろんな立場のいろんな人の知恵が出てきて、協力しあって進めていける。分担したり、任せたりすることで、情報も流通するし、雰囲気が良くなりました。
畠山
私も自分で抱え込む傾向があると自覚しているので、自分で取り組むことと、任せることを意識して線引きするようになりました。学校長になって改めて思うのが、日頃から考えていないと自分がその立場になった時に動けないということです。今より高い視座をもっていないと、動けるポジションになった時にスタートできない。そのためにも仕事の共有や権限委譲は成長に不可欠だと感じました。
水田
マトリクス組織ならではのメリットですね。でも、単に枠組みを作っただけではダメで、MVVの浸透や、それを後押しする人事制度の着実な運用、そして何よりそれらの構築を担ったメンバーの皆さんが、学校や所属組織の枠を越えた視座・視野を持ち始めたというのが功を奏したのだと思います
米山
確かに日常業務とプロジェクト業務で管理職・評価者が異なりますが、現在は業務やプロジェクトでの成果を評価者が吸い上げる仕組みができたのでスムーズに動いています。ぶれない評価軸があるからこそ、それも可能なのでしょう。そして、そうした運用を後押ししてくれたのが、佐々木理事長からのメールでした。
畠山
あのメールはまさに絶妙なタイミングで、本当にすーっと心に染みましたし、モチベーションもアップしました。

米山和伸さん・畠山知代美さん

野元
組織再編の直前、2023年5月に義父様であり前理事長の佐々木啓之さんが亡くなられて、6月に由さんが後を継いで理事長に就任されたという、様々な変化が急激に起きた時期ですよね。組織が変わろうという時期に、トップが変わるのは衝撃が大きかったと思いますが、よくぞ乗り越えられてこられたと思います。
佐々木
本当に突然だったので、言葉足らずになるとまずいと思い、新理事長としての思いをまとめて、一人ひとりに送ったんです。まずは前理事長から「あなたらしい時代にあったやり方でやっていきなさい」というアドバイスをもらったことを伝え、そして、これまで行ってきたMVVに基づいて経営を実践していくこと、さらに理想の職場環境として、①活気があり、心理的安全性があること、②チームワークがよく、助け合えること、③自分の成長を実感できる、成長の機会があることをあげました。そして、そのためには組織や個々人の役割のあり方を見直すことや、職場のルールやバリューの徹底が重要であることを伝えました。とりわけマトリクス組織の要である「横ぐしのプロジェクトチーム」については、皆から自発的に生まれたものということもあり、絶対に成功させたかった。そこで属人化を脱し、協力し合って目標を実現する大切さを強調したんです。
野元
それまでにも深く長い思考があったとはいえ、そのタイミングでそれだけのメッセージを出されたリーダーシップはさすがだと思います。
佐々木
皆が苦労して進めてきたことですから、トップの役割はそれを支持・支援を宣言することだと思いました。その上で、日々の仕事に直結するバリューに関して、どのような職員・教員の行動が望ましいのか、共通認識を持つために、2024年4月に初の全体集会を行いました。学校が1年で一番忙しい時期ですが、それだけ大切だと考えたわけです。改めて「バリューとは何なのか」「実践するにはどう行動するべきなのか」を話し合い、今まさに、そこで共有したことを深めて可視化しつつあるところです。

余白あるリーダーの働きかけによって、自律回転が加速する

水田
人事制度プロジェクトは納期が決まっていることもあり、つくるまでは誰でも真面目に取り組みます。しかし、それで満足してしまい、実際の運用となると「絵に描いた餅」になりがちなんです。浸透しないうちに現場で勝手に調整し、制度が骨抜きになることも少なくありませんが、佐々木学園さんは2年経ってしっかりと運用されていて、しかも本質的な目的に近づけるために改善も続けている。これは変化を定着させるのに本当に重要なことなんですよ。
野元
さらに皆さんが嬉々として取り組まれているのがいいですよね。最近いただくお電話からも、明るくてイキイキとされていらっしゃるのが伝わってきます。
佐々木

ありがとうございます。確かに、以前と比べてずいぶん雰囲気が変わったと思います。オープンキャンパスや新規事業構想などプロジェクトで取り組む時には、メンバー間で「ATM:明るく、楽しく、前向きに」と声がけしているんです。不平不満なら外で言おうねと(笑)。私も校内にいるときは、不平不満も解決すべき課題や問題と捉えて、ポジティブに取り組んでほしいというメッセージを伝えています。そうしているうちに、様々なプロジェクトや変革が、現場発で主体的に行われるようになってきたのは間違いないでしょう。

たとえば、直近では2024年4月度から始まるTSBSの留学生クラスの構想も、先生方から提案があって実現させたものです。また、MVV整理の時に、3年後の目標として「TGBが留学生の応募を4倍にする」と語っていたんですが、2024年度には本当に達成したんですよ。

ブリコルール 野元・水田

水田
先生方が佐々木学園としての“これから”を主体的に考えられるようになってきたことに加え、組織を統合しつつ横ぐしで事務方との連携を深めたことが効いているのですね。人間関係も含め、情報が密に共有できる環境や文化が醸成されてきたように思われます。
佐々木
そうかもしれません。もともと私は新しもの好きで、前職(リクルート)の「現状維持は衰退だ」という文化の影響もあって、長らく「変えていこう」というメッセージは出し続けていました。以前は「言ってもなかなかやってくれない」と感じていましたが、MVV整理や組織・制度づくりを通じて雰囲気や文化が大きく変わったと感じています。変わったというよりも、もともと持っていたものが現れて、それが自律回転し始めたというところでしょうか。たとえば、総務チームの若いメンバーが、収益改善のために自社が保有している施設を改装して外部に貸し出すことを提案してきたりするんです。
野元
それはすばらしいですね。実はある方から、「理事長は組織のコマではなく“人として”見てくれるので、意見や提案がしやすいんです」と伺いました。そうしたリーダーの姿勢が、一人ひとりのエンゲージメントや成長につながっているように感じます。
水田
私もリーダーの姿勢という意味で、佐々木さんのメッセージには「絶妙な余白」があり、それがメンバーの方々の成長を促しているように思います。100%の指示、正解を押し付けない。わかりにくいと感じる方もいるかもしれませんが、それがむしろ自分で考え、行動するスイッチになっています。
佐々木

無意識ですが、そうだと嬉しいですね。実際、私が入りすぎないほうが想像以上に良いアウトプットが出てくるんです。一人ひとりと年に2度面談をしますが、「その人にとって今大切だ」と私が思う“本質的な問い”を絞って投げかけることと、「大丈夫かどうか」の様子見のみです。自主的に考えるようになれば自然と成長するし、それによってチームも変わると信じています。さらに次世代のリーダーを育てることにおいても、プロジェクト制は有効と感じています。

以前は、学校ごとの目標のもと、理事長目標、リーダー目標があって、チームや個人の目標があるというイメージを持っていましたが、今は完全に逆転しています。MVVのもと、一人ひとりが考え、そのどうしたいか、どうなりたいかをサポートするのがリーダーであり、理事長であり、組織のあり方なのではないかと。そのためには権限委譲も積極的に行う必要があると考えています。

野元
まさにMVVや人事制度改革を起点として組織運営を変革していくという、望ましいプロセスだと感じます。そして、それが今も進化しているのはすばらしいことです。
佐々木
二つの学校組織間にもシナジーが生まれ、たとえばTSBSの方で「韓国メイクが日本で流行っている。留学コースが作れないか」と課題提起があったら、すぐにTGBで韓国語クラスを担当している先生が相談に乗り、留学エージェントと話をして…とトントン拍子で実現させていきました。そういうことが次々と起きて、組織を動かしていくようになるのではないかと期待しています。

現場が変わり、経営陣・トップにも影響。好循環が続く組織へ

水田
権限移譲って、言葉にするのは簡単ですが、なかなか難しいですよね。人事制度の等級定義にも、権限移譲されたことを各等級に期待するようなメッセージは出すものの、これがなかなかできず、「給料を決めるための階段」などと思われがちなんですが、本当は組織の中でうまく機能させると大きな効果が得られます。
佐々木

ちょっとモチベーションが上がりすぎて心配なくらいです(笑)。現在は、米山や畠山などがメンバーに対して評価につながる行動例を提示するなどして自律的な行動を促していますが、中には「自分はこういう目標を掲げ、実現したい」と、自ら宣言する人も出てきました。

実は私自身も、このMVV整理や人事制度・組織づくりを通じて、意識が変わってきたことを実感しています。かつては厳しい経営環境にあってプレッシャーのような責任感を感じていたのですが、「この学校の価値」や「理事長としての在り方」などを考え、自ら行動し始めたメンバーを目の当たりにして、学生はもちろん、事務方や先生方などあらゆるステークホルダーに対して、「自分に何ができるのか」と考え、その可能性にワクワクするような高揚感を感じています。

佐々木由さん

野元
佐々木さんご自身も「本質」に立ち返られて、それが新たな問題定義や変革のモチベーションに繋がったということなのでしょう。
佐々木

そうですね。ここまで没入して取り組めたのは、先代の理事長に「後悔するな」と背中を押してもらったことも大きいです。先代は「私の人格は私がつくり、私の幸せは私がつくる」という主体的な“育”を重視されていましたが、学校として、個人や組織のあり方としても、そこに立ち返ることの大切さを強く感じています。

今後増えるであろう留学生についても、東京都の専門学校の平均就職率が4割程度のところ、当校はコロナ禍でも96%以上を維持してきました。技術や知識などの教育を提供する一方で、最後まで寄り添い、面倒見の良い学校であり続けてきたからなんですね。これからも先生方事務方とも、「この人に会えて良かった」と思ってもらえるような存在になってほしいと思っています。なかなかやんちゃな学生もいて大変ですけどね(笑)。学生がここでの学びを糧として仕事にやりがいを得て、人生を生き生きと歩んでいく。そこに喜びを感じる人達が集まっているし、ぜひそういう人に来てほしい。そうした価値観や思いを、次代にも引き継いでいきたいと思います。

水田
ぜひ、引き続き、新たな人事制度を上手く活用いただけると幸いです。
野元
また、この先の歩みの成果をお聞きできることを楽しみにしています。本日はありがとうございました。

佐々木由さん・野元・水田

ブリコルール担当より

  • ブリコルール 代表 
    野元 義久

    ある統計では、創業経営者の次に“優秀と評される”のは血縁跡取り経営者ではなく「娘婿経営者」とあります。半歩距離を置く(置かなければならない)関係が、経営DNAの伝承を確たるものにしていくのでしょう。
    由さんは先代に、そして社員にも、常に適切な間合いをマーケティングしてこられたと感じます。孤立や暴走に陥いらずに、周囲の力を活かすためにも、ファミリービジネスのリーダーは親族や社員の感情や気持ちのマーケティングを疎かにしてはいけない、と学んだ事例です。

  • ブリコルール 取締役 
    水田 道男

    佐々木学園さんは、手離れが悪い。これは生徒さんたちに寄り添う教育を徹底している佐々木学園さんのDNAだと思う。だから、プロジェクトの契約終了後も、私たちが寄り添うことが一定期間継続した。でも、これは嫌なことではない。寧ろ、私たちの特徴や仕事の出来不出来を実感する大切な時間であったと思う。創業時に思っていたそんなことを私の中から改めて引きだしてくれた佐々木学園の皆さんは、正に教育者であった。

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