写真左より
学校法人佐々木学園は、東京総合美容専門学校(TSBS)、東京グローバルビジネス専門学校(TGB)を運営し、「学生一人ひとりの夢の実現」を目標に、丁寧な教育・技術指導に加え、就職支援にも力を入れています。少子化などにより学校経営が厳しくなる中で、競争力を高めるために組織強化に取り組み、2022年4月に人事制度を刷新し、2023年7月に大胆な組織再編を行いました。
一連のプロジェクトには、婚家の家業を継いで理事長となられた佐々木由さんをはじめ、TSBS学校長の畠山知代美さん、事務局次長の米山和伸さんら幹部、事務方・先生方も参画。図らずも会社承継と並行して実施されたプロジェクトの経緯とともに、新人事制度施行や組織再編の変化、今後の展望などについて伺いました。
学校法人佐々木学園 理事長 佐々木 由氏
学校法人佐々木学園 事務局次長 米山 和伸氏
学校法人佐々木学園 東京総合美容専門学校 学校長 畠山 知代美氏
ありがとうございます。確かに、以前と比べてずいぶん雰囲気が変わったと思います。オープンキャンパスや新規事業構想などプロジェクトで取り組む時には、メンバー間で「ATM:明るく、楽しく、前向きに」と声がけしているんです。不平不満なら外で言おうねと(笑)。私も校内にいるときは、不平不満も解決すべき課題や問題と捉えて、ポジティブに取り組んでほしいというメッセージを伝えています。そうしているうちに、様々なプロジェクトや変革が、現場発で主体的に行われるようになってきたのは間違いないでしょう。
たとえば、直近では2024年4月度から始まるTSBSの留学生クラスの構想も、先生方から提案があって実現させたものです。また、MVV整理の時に、3年後の目標として「TGBが留学生の応募を4倍にする」と語っていたんですが、2024年度には本当に達成したんですよ。
無意識ですが、そうだと嬉しいですね。実際、私が入りすぎないほうが想像以上に良いアウトプットが出てくるんです。一人ひとりと年に2度面談をしますが、「その人にとって今大切だ」と私が思う“本質的な問い”を絞って投げかけることと、「大丈夫かどうか」の様子見のみです。自主的に考えるようになれば自然と成長するし、それによってチームも変わると信じています。さらに次世代のリーダーを育てることにおいても、プロジェクト制は有効と感じています。
以前は、学校ごとの目標のもと、理事長目標、リーダー目標があって、チームや個人の目標があるというイメージを持っていましたが、今は完全に逆転しています。MVVのもと、一人ひとりが考え、そのどうしたいか、どうなりたいかをサポートするのがリーダーであり、理事長であり、組織のあり方なのではないかと。そのためには権限委譲も積極的に行う必要があると考えています。
ちょっとモチベーションが上がりすぎて心配なくらいです(笑)。現在は、米山や畠山などがメンバーに対して評価につながる行動例を提示するなどして自律的な行動を促していますが、中には「自分はこういう目標を掲げ、実現したい」と、自ら宣言する人も出てきました。
実は私自身も、このMVV整理や人事制度・組織づくりを通じて、意識が変わってきたことを実感しています。かつては厳しい経営環境にあってプレッシャーのような責任感を感じていたのですが、「この学校の価値」や「理事長としての在り方」などを考え、自ら行動し始めたメンバーを目の当たりにして、学生はもちろん、事務方や先生方などあらゆるステークホルダーに対して、「自分に何ができるのか」と考え、その可能性にワクワクするような高揚感を感じています。
そうですね。ここまで没入して取り組めたのは、先代の理事長に「後悔するな」と背中を押してもらったことも大きいです。先代は「私の人格は私がつくり、私の幸せは私がつくる」という主体的な“育”を重視されていましたが、学校として、個人や組織のあり方としても、そこに立ち返ることの大切さを強く感じています。
今後増えるであろう留学生についても、東京都の専門学校の平均就職率が4割程度のところ、当校はコロナ禍でも96%以上を維持してきました。技術や知識などの教育を提供する一方で、最後まで寄り添い、面倒見の良い学校であり続けてきたからなんですね。これからも先生方事務方とも、「この人に会えて良かった」と思ってもらえるような存在になってほしいと思っています。なかなかやんちゃな学生もいて大変ですけどね(笑)。学生がここでの学びを糧として仕事にやりがいを得て、人生を生き生きと歩んでいく。そこに喜びを感じる人達が集まっているし、ぜひそういう人に来てほしい。そうした価値観や思いを、次代にも引き継いでいきたいと思います。
ある統計では、創業経営者の次に“優秀と評される”のは血縁跡取り経営者ではなく「娘婿経営者」とあります。半歩距離を置く(置かなければならない)関係が、経営DNAの伝承を確たるものにしていくのでしょう。
由さんは先代に、そして社員にも、常に適切な間合いをマーケティングしてこられたと感じます。孤立や暴走に陥いらずに、周囲の力を活かすためにも、ファミリービジネスのリーダーは親族や社員の感情や気持ちのマーケティングを疎かにしてはいけない、と学んだ事例です。
佐々木学園さんは、手離れが悪い。これは生徒さんたちに寄り添う教育を徹底している佐々木学園さんのDNAだと思う。だから、プロジェクトの契約終了後も、私たちが寄り添うことが一定期間継続した。でも、これは嫌なことではない。寧ろ、私たちの特徴や仕事の出来不出来を実感する大切な時間であったと思う。創業時に思っていたそんなことを私の中から改めて引きだしてくれた佐々木学園の皆さんは、正に教育者であった。