CASE #6 / パーソル テンプスタッフ株式会社

トップの意図を
ミドルが具現化していく道のり

HOMECASEパーソル テンプスタッフ株式会社

お話を伺ったみなさん

写真左より

  • 松野 さおり氏
    スタッフィング企画本部 スタッフィング企画部
    SBUスタッフサポート室 室長
  • 土方 一之氏
    スタッフィング企画本部 スタッフ労務部
    スタッフ業務推進室室長
  • 後藤 成子氏
    スタッフィング企画本部
    本部長

パーソルグループの一員として、人材派遣・アウトソーシング事業を手掛けるパーソルテンプスタッフ株式会社。幅広い業務を担うスタッフィング企画本部は、社会的環境変化や社内各署からの期待に応えるため、新年度からの体制を一新しました。そのスタートダッシュをサポートすべく、ブリコルールは本部長、部長とマネジャーが集うセッションを企画・実行しました。トップの後藤氏からこのセッションの目的や手応え、そしてセッションに参加したミドルの代表として土方氏、松野氏から得られた気づきや手応え、そして今後の展望をお伺いました。

トップの意図を受け、ミドルが語り合う

人材ビジネス業界で屈指の規模を誇るパーソルテンプスタッフ株式会社は適切な仕事マッチングだけでなく、派遣スタッフへの労務・福利厚生サポートやキャリア教育などの手厚いサポートにも定評があります。これらを一手に引き受ける「スタッフィング企画本部」が2022年度から新しい体制へと移行することになりました。その背景には人材ビジネスを取り巻く大きな社会的変化があるといいます。

「当社は来年2023年に創立50周年を迎えます。これまでは、どれだけ多くの人に適切な仕事を紹介できるか、早いマッチングで企業に貢献できるかが、私たちの価値基準でした。しかし、人々の働き方や価値観が多様化する中で、“働く”における多くの選択肢を提供することで、働き手の可能性を広げ成長を後押しすることが新たな使命となりつつあります。また、企業側に対しても人材を供給するだけでなく、業務設計やビジネスを共創するところからの貢献が求められるようになりました」(後藤氏)

パーソルテンプスタッフ後藤成子氏

これまでの延長線上で考え、行動していては時代に取り残されてしまう。10万人以上もの利用者を支えていくためには、自分たちも過去の経験に頼るだけではなく、新しい視点や思考を取り入れていく必要があるーーそんな問題意識から、本部内に新たな風を起こすことを目的に体制を再構築しました。しかし、新体制を稼働させるにあたり、後藤氏には一つの懸念がありました。

「改革の加速には、経営層の意図を理解し、同期して、一人ひとりが自ら考えて行動することが重要です。部長には経営と同じ視座で考えて欲しい。そのために私は情報を共有している。そして部長はさらに自分の言葉で部下につないでくれているはず…、と思っていても本当に細部まで伝わっているのかが懸念でした。そう考えていた時に、ある部下から『後藤さんの考えを直接聞きたい』と言われてハッとしました。同じことでも、誰から・いつ・どのように聞くかで響き方は全く違います。本部の責任者として私からのメッセージも必要なのだと思いました。わが社では社長が社員に直接メッセージを伝える機会を増やしています。私も本部の責任者として、自分の言葉でもっと伝えていく必要があると思ったんです」

BRICOLEUR小野寺、パーソルテンプスタッフ後藤氏

そこで組織体制が変わるスタートダッシュの機会に、研修という形で「もっと後藤さんの意思を伝えてはどうか」という、ブリコルールからの提案を受け、組織の要となるマネジャーに向けたセッションを実施することになりました。

「私にとっては目からウロコというか、本当に画期的なことでした。さらに『後藤さんは伝え終わったら、後は黙っていてください』と言われて驚きました(笑)。私が発したことがどのように伝わり、どのように受け止められて、咀嚼され、言語化されるのかを見届けることが課せられました。マネジャー一人ひとりが私からのメッセージを自分たちの仕事に紐付けることがどれくらいできるだろうか…と、半信半疑ながらも期待が高まりました」

自分ごとを起点に、部署の役割・方針や協業事項を可視化

セッションは、部長・マネジャーの8人が一堂に会し、約1ヶ月ごとに計3回に渡って行われました。

参加者の一人、土方氏は「日々忙しく過ごし、タスクレベルの話が中心となりがちな中で、お互いに、どのような想いや考えをもっているのかを知らずにいたことがよくわかりました。コロナ禍によって、直接業務とは別の”余白のコミュニケーション“が激減していたことも痛感しました。セッションは昨年との実績対比などではなく、各自の夢や将来など個人的な考えを起点として始まり、大きな視野から事業や仕事をフラットに見つめ、皆がそれぞれ感じていたことを言葉にしました。この経験はその後においても大きな意味があったと思います」と振り返ります。

パーソルテンプスタッフ土方氏

松野氏も「自分の考えや思いを言葉にする時間があったからこそ、上層部から伝えられた意思や方針も自分ごとに照らし合わせて理解が進んだのかもしれません」と頷き、「これまでは上層部から“落ちてくる方針”を『なるほど』と受け止めるだけになっていたように思います。上司に対する質問も自分の仕事に落とし込むための確認作業であって、方針や計画を疑ったことはありませんでした。しかし、そこであえて自分たちが『疑問に感じたこと』や『こうしたらいいのではないかと考えたこと』を言葉にし合ったことで理解が深まりましたし、人によって受け取り方やその表現が違っていたりすることにも気付きました」と語ります。

セッションでは、自部署の役割や業務の方針をキャッチフレーズ化することにも取り組みました。ふさわしい言葉を探索する中で、本質に迫っていくという体験は、同じく上層部が発するメッセージの成り立ちを追体験することにもなりました。

「たとえば、パーソルグループのビジョンである『はたらいて、笑おう。』も、人による捉え方の違いが興味深かったですね。そして違いがある中でも、みんなに共通していることもあることがわかりましたし、さらに上層部がどんなことを考え、何を伝えたいかを遡って考える機会になりました。同じように試行錯誤して言葉を選ぶことで、キャッチフレーズも本質がメンバーに伝わりやすいものとなり、職場で日常的に繰り返し使えるものになったと思います」(松野氏)

パーソルテンプスタッフ松野氏

こうした取り組みはなかなか自分たちだけでは難しいことであり、第三者が入ることで促される効果があったといいます。

社内の人間同士での会話では、なんとなくわかっていることも多いため、『あ、そんな感じだよね』とわかったつもりになって終わってしまう。そこをフラットに『本当にそれだけですか』『それがやりたいんですか』と質問されることで、改めて先入観を除いて考えることができました。今はメンバー一人ひとりが自律的に考えていくことが求められます。マネジャーはメンバーの思考を促すファシリテーターとしての能力が求められるようになっています。小野寺さんと一緒にいると、たとえば役割をもたせて私たちが発言しやすくなるように工夫したり、議論する場への介入が絶妙だったり、『メンバーにもこうすればいいんだ』という学びが随所にありました」(土方氏)

そして、上層部という縦方向への気付きとともに、横にいる他部署への気づきも多数得られたといいます。セッションでは、他部署に貢献できることや期待したいことを出し合うというワークも実施。その結果、ホワイトボードが「あなたの部署に貢献したいこと・一緒にやっていきたいこと」で埋め尽くされました。

「お互いに忙しい中で埋もれていた助け合おうとする気持ちやつながりたい欲求が、可視化されることで爆発したのかもしれません(笑)」(土方氏)、「お互いにリクエストしあえる心理的安全性を確認できたように感じます」(松野氏)と語るように、ポジティブな空気感の醸成にも大きく貢献しました。

一人ひとりが自律的に考えて行動する組織を目指して

約3ヶ月間に渡って行われたセッションを終えて、土方氏、松野氏は「改めて階層ごとの役割が可視化された場だった」と振り返ります。各部署の役割が明らかになり、それによってマネジャーの立ち位置や役割も明らかに捉えることができました。さらにその気づきや学びをそれぞれのチーム運営にも活用することをイメージしているようです。

「一つのものを皆で作り上げるという醍醐味を感じることができました。考えていることが違っていても、実は根っこは同じと感じることもあり、それをゴールとして共有できればチームは強くなっていくのでしょう。次のチャレンジという意味では、本部長から方針が出てくる前に、部の方針をボトムアップでもつくってみて、後にすり合わせてみるという体験をしてみたいですね」(土方氏)

「リモートを多用する中で、チームビルディングの難しさを実感しています。互いの雰囲気が感じられにくい中で、言葉を通じて一体感を獲得していく。そんな可能性を本セッションで感じることができました。チーム内でも同様に1年間を通じて共通のゴールに向かっていけるよう、課題を立てたセッションもできるといいなと思います」(松野氏)

BRICOLEUR小野寺、パーソルテンプスタッフ土方氏、松野氏

こうしたセッションの間、後藤氏も“黙って”参加し、マネジャーの皆さんの様子を見守りました。後藤氏もセッションを振り返り、「私が一番気づきを得られたかもしれない」と語ります。

「それぞれが話しているのを聞いて、一方的に私から伝えていたものが、どのように受け止められたのかが可視化されて大変興味深く思いました。これを確認しておけば、もっと前から相乗効果があったのではないか、機会損失していたのではないか…と反省しています。経営の言葉は抽象的になりがちですが、現場は具体的な表現の方が通じやすい。単語一つとっても、やはり業務に近い言葉が響いていくんです。改めて、『その人達の言葉』で伝える大切さを実感しました」

そして、一人ひとりが自律的に考えることの重要性や頼もしさも感じつつ、まずは上層部からの情報提供の重要性や戦略・方針の提示をしっかり行なっていく決意をしたといいます。

「どっちが先かといえば、やはり上から方針やメッセージを示すことが大切だと思います。考えた結果だけでなく、その結果に及んだ情報やロジックも明らかにして、潤沢な情報提供が必要だと強く感じました。上層部の言葉を受けてそのまま降ろすのではなく、それぞれが自分で考えた結果、同じ視座で同じ方向を向けるようになっていくといい。どうしても、上司は自分と同じタイプを好んでしまいますが、同じゴールを目指しながらも異なるタイプを創り育てていくことが組織力向上には必須だと思っています」

そして、自律的に考えるチームを作るためには、上司の指示ではなく支援が必要になる時代。「あの部門で仕事をしたいと、人を惹きつける職場にしていきたい」と後藤氏は語ります。「できると思ってやっても、できないだろうと思ってやっても、結果が変わらないなら、楽しくやった方がいいですよね。ブリコルールのセッションでも、誰もが楽しそうにしているのが印象的でした。その経験が各チームにどんな影響を与えていくのか、これから定点観測したいと思います」

パーソルテンプスタッフ松野氏、土方氏、後藤氏、BRICOLEUR小野寺

ブリコルール担当より

  • ブリコルール 取締役 
    小野寺 友子

    別の施策の成果を振り返っている場で「来期は組織を強くするためにマネジメント体制から見直す」 というお話を後藤本部長から伺い、本部長の意図を部長・マネジャーと合わせていく大切さをお話しました。
    新体制の早期立ち上げを目的に、3回に渡って、本部方針の理解を深め、踏まえて各チームの役割や目標に落とし込み、メンバーの育成計画までデザインしていきました。 “伝えたつもりが伝わっていない”“分かったつもりが分かっていない”ということを互いに実感され、対話を通じて回を重ねるごとに協働関係が育まれていくのを目の当たりにして私も嬉しく思いました。

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