CASE #2 / ポスタス株式会社
目指す姿の解像度を上げ、
自分たちで表現していくことで
さらなる成長を目指す
Profile of ポスタス株式会社
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- 泉 大五郎
コーポレート統括部
エグゼクティブマネジャー
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- 高松 佑夏子
コーポレート統括部 コーポレート部
人事総務グループ マネジャー
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- 大川 寛史
make smiles sales統括部 MSS1部
ゼネラルマネジャー
Profile of 株式会社BRICOLEUR
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- 小野寺 友子
ブリコルール 取締役
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- 西村 元太
コンサルタント
- 「このままではいけない」
とわかりつつも
何から?どうすればいいか?
がわからなかった。
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高松
- 私たちはこれまで受注生産型のシステムデベロッパーだったのですが、2013年に事業を転換し自社サービスとして「POS+」というクラウドPOSレジをローンチしました。
ここ2~3年で事業が多様化、拡大し、パーソルグループ内での注目度も一気に上がって新社として独立するまでになりました。
順調にみえた一方で組織内には歪が生まれてきました。目の前の仕事に忙殺され、社員から「この仕事が何につながっているのか」、「何のためにやっているのか」という声も聞かれ、人事として課題を感じるようになりました。
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大川
- 私は2019年にポスタスにジョインしましたが、特に大手企業の案件が順調ではありませんでした。最初に引き継いだお客様がとても不安な顔をされていたのを覚えています。
会社として急成長している真っ只中で、それを受けとめられる組織の体制が整っていなかったのです。しかし、当時の自分たちは何が原因でどこを直せばよいかわからなかったというのが正直なところですね。
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西村
- 前身の組織体制がそのまま引き継がれていたことも苦労の一因でしょうか?
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大川
- もともとデベロッパーでオーダーされたものをつくるというカルチャーでしたから、プロダクトアウトに適したコミュニケーションは不得手でした。
2015年にサービスとしての立ち上げはひと段落しましたが、次は仕組化していかなければより良いモノは生み出していけないという危機を感じていました。
前身の体制だと、どうしてもパフォーマンスが高いプレイヤーの個の力でがんばってしまい、組織として良い方向に向かうイメージは誰も持てていない状況でした。
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高松
- ポスタスのビジネスモデルが代理店モデルから始まっていることも影響していたかもしれません。私は当時営業で、ポスタスの直販組織の立ち上げから参画していたのですが、新しく始めた直販の営業が案件を持ち帰っても開発チームはその話に見向きもしてくれなくて、壁があると感じていました。今はそんなことないのですが当時は「パッケージプロダクトなんだからパッケージのまま売って欲しい。機能追加は受け付けられません。」と取り合ってもらえなかったりして、営業と開発の連携が図れていないのが顕著に出てきた時期でもあったなあと思い出します。
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小野寺
- 初めてのお打ち合わせでは、みなさんが「このままではよくない」と様々な問題を認識されていた状態でした。
課題が散在している印象だったので、まずは課題ごとのつながりを整理するところから始め、ディスカッションを重ねて、組織で大事にしたい“行動指針を定めるプロジェクト”を伴走することになりました。
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泉
- そうですね。
ディスカッションを重ねるうちに“ポスタスのビジョンである「おもてなしのお手伝いで、はたらく、を笑顔でみたす。」への共感度は高いが、それが目の前の仕事とつながっていない”という本質的な課題をあぶり出して頂き、私たちの問題認識とつながりました。そして、新社設立のこのタイミングを活かして、現場の仕事とビジョンの橋渡しとなるものを “行動指針”という形で作ろうというご提案でした。
- 自分たちを客観視することで
変革のエネルギーが立ち上がった。
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泉
- これまでの仕事の特性上、求められたことをしっかりやり切るのは得意なんですが、「こんなこと考えてみて」というお題に対して自分たちで答を考えるのがとても苦手でした。
全マネジャーが参加して行う、計7回のプロジェクトミーティングでしたが、1,2回目のワークでは「どうせ何も変わらない」とネガティブに参加している人が多かったですね。
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高松
- そう、小野寺さんがその場で危機感を察知してくださり、予定していた進行を一旦止めて、「プロジェクトを進める上で障害となっていることは何ですか?」と自分たちを見つめる時間を取ってくれました。
すると、マネジャーからは「結局こんなの決めても変わらない」とか「決めてもメンバーに説明する自信がない」「業務が忙しくて考える暇さえありません」という意見が出ました。
私は参加しているマネジャーたちに対してもどかしい思いを持ちました。自分の会社のことで、しかもマネジャーなのだから、自らもっとよくしようと意欲的に参加してほしいと感じていました。
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泉
- いよいよ私も「変わりたくないのか!」と声を出す寸前だったのですが、その際に小野寺さんが一度立ち止まってみんなの声を丁寧に拾って下さったんですよね。
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小野寺
- そうですね。中には「こんなことをやっても変わらないんじゃないか」という声も出てきましたが、それはみなさんの「変わりたい」とか「組織をよくしたい」という思いの裏返しなんだとも感じました。1,2回目あたりは、お互いの想いのギャップや捉え方の違いがあったためにプロジェクトにも抵抗があったのかな、と。
そこで私たちは予定していたプログラムを一度手放して、再度企画することにしました。
3回目には膿を全部出し切り、初めて目指す姿に向かう準備が整ったと思います。
全員が課題を自分の言葉で考えて発言し始めたのは大きな変化でしたね。
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大川
- 印象的だったのは、一人のマネジャーが「ゴールを示してくれませんか」と小野寺さんに求めた時の対応です。
「ゴールは私は持っていません。皆さんの会社の話をしているんでしょう?」
「もし私がゴールを示したら、これまでと同じことが起きますよね」と、言われて「ハッ」となり、全員が自分たちで考え始めたのを覚えています。
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西村
- 4回目にみなさんにお願いした「ステークホルダーにインタビューしてきてください」という課題から変化は加速しました。1,2回目は組織として良くない部分にフォーカスされていたので、それを受けとめることに疲れていたというか…、認めてほしい、助けてほしいという気持ちが根底にあったのかもしれない。
ステークホルダーからのポジティブなコメントにも後押しされて参加度が変わっていきましたね。
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高松
- ステークホルダーインタビューで、お客様、社内、自分の家族に対してポスタスに対してどう感じているかインタビューをしました。認めてくださるコメントもありましたし、これからへの期待も確認できて“これからのポスタスらしさ”が抽出され始めたことを覚えています。
- 「自分たちに何ができるか」を
自分の言葉で表現した瞬間から
空気が変わり始めた。
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大川
- 4回目以降、ゴールがどうなるかはわからないけど「自分なりに形にしよう、やりきろう」という様子が見えてきて結構楽しそうな雰囲気になっていきましたよね。
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小野寺
- 大川さんには本当に助けてもらいました。
大川さんのパワフルなマネジメントは言葉のチョイスからも感じていました。課題も期限一週間前に提出していただいたり、と、常に議論のリーダーシップをとっていただきましたね。
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西村
- 「おもてなしのお手伝いで、はたらく、を笑顔でみたす。」というビジョンの具体的な実現状態を議論するために、「あなた自身がおもてなしされた体験」を話すワークをしました。その場では、会社の合理性だけで仕事をするのではなく、お客様、そしてお客様のお客様にまで思いをはせる話に展開していきました。
このタイミングでビジョンを紐解いて具体的な行動指針を決めるワークに進みました。
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高松
- その時に視界がバチッと揃ったなという感覚がありました。
全員の「お客様のお客様」のことを考えた発言が自然と出てきたことが良い方向に向かっていると実感できた時ですね。
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大川
- 先ほど小野寺さんがおっしゃっていた、根底にある不安や承認欲求が満たされた状態になったからだと思いますね。「今、あるものは今のままでいいんだ。」ってメンバーがそれぞれ感じた結果、素直に前を向けるようになったと思っています。今まではどうしても厳しく厳しくの方向になっていたので。
だからこそ、今回策定したDNAにある「愛」「スマイル」の言葉には救われるんだと思います。
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高松
- 解像度上がった感じがしますね。おもてなし体験シーンとはどういうシーンなのか、メンバーで絵を描いたんですよね。そしたら「みんなの絵、笑ってますね」ってなって。私たちが目指しているシーンはこういうことなんだとつながったのがすごくよかったなって思います。
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泉
- ポスタスをよくしていくことは、お客様やその先のお客様のサービスの品質をあげることなんだと全員で共通認識を持つことができました。この共通認識に向き合う時間を作ることで前に進めるんだと感じましたし、我々の今後の広がりが見えた気がしました。
- DNAが出来たのはゴールではない。
DNAを活かしきってこそ、
これからのポスタスが形成されていく。
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大川
- ビジョンがあるから認識は一緒だと思っていたのですが、結局僕らは抽象的なワードで分かった気になっていたんですね。おもてなしという言葉になんとなく流されていたと思います。
もともと僕たちは今見えているモノに対しては高いパフォーマンスを発揮するのですが、見えないと急に止まってしまう。
だからこそ、ビジョンを紐解いて行動指針や価値観に落としていく作業が必要だった。
3回目に今までのやり方を壊してくれたブリコルールさんの決断と5,6回目のビジョンを具体化するワークショップによってみんなが納得できた気がします。
結果、みんながポスタスについて自分事化していける環境が揃いましたね。
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小野寺
- 私たちの施策が終了してしばらく経って、今はポスタスさんの自走期間だと思うのですが、いかがでしょうか?
変わったことはありますか?
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高松
- そうですね。約1年経ったのですが、今回つくったポスタスのDNAを基準にしたコミュニケーションが取れてきました。さらに浸透させていきたいという動きは経営陣含め強く感じられるようになりました。
表彰制度や評価軸もDNAの体現を基準にするなど、会社の制度の根幹にDNAを紛れ込ませています。
マネジャーの目標設定にも、「メンバーにDNAを浸透させること」というコメントが見られるようになり、嬉しく感じています。
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西村
- 私たちも抽象と具体の度合いは慎重に扱ってきました。マネジャーのみなさんからメンバーにも「これを目指せ」というコミュニケ―ションだけでなく、ある程度、メンバー自身が考える余白があるくらいの抽象度で留める方が、広がりもあって結果的に良いと思っています。
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高松
- そうですね。抽象的すぎるとわかった気になるし、具体的過ぎると自分たちの言葉になっていかないという経験もしました。今回の取り組みは絶妙な抽象度でしたね。
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小野寺
- その程度感はすごく気にしますね。すべてこちらが指し示してしまうとつまらないですから。お客様ごとにもならないし、今回もっとも気を使ったポイントでもあります。
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泉
- 新社の法人化という段階でマネジャー全員が合意するDNAが完成したことにより、プレイヤーから抜け出せなかったマネジャーが会社のこと、メンバーのことを考えて行動を起こすことができ、ポスタス全体の成長につながっているように感じます。
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高松
- 私自身も人事としてとても大きな学びがありました。
プロジェクトスタート当時は営業から人事になったばかりで、学びがすごく大きかった。綿密なワーク・宿題、シナリオについても裏側をご一緒させていただき、すごく勉強になりました。いい時間を過ごさせていただいたなと思っています。ありがとうございました。