CASE #16 /
株式会社ポジティブドリームパーソンズ

“意思”を育むマネージャー研修が導く
組織の安定と業績の拡大

HOMECASEポジティブドリームパーソンズ

お話を伺ったみなさん

写真左より:

  • 中出 麻衣氏
    人財開発室ゼネラルマネージャー
  • 髙野 成美氏
    人財開発室エグゼクティブマネージャー

株式会社ポジティブドリームパーソンズ(以下、PDP)は、2024年、コロナ禍で4年間中止していたマネージャー育成研修「マネジメントカレッジ」を再開させました。ブリコルールの伴走のもと、かつてのプログラムをそのまま行うのではなく、現状に合わせた内容にリニューアル。マネージャー個人の成長のみならず、組織や業績にも良い影響を与える取り組みになっています。なぜそのような効果が上がっているのか、マネジメントカレッジ事務局を務める人財開発室のお二人のお話から紐解きます。

現状の課題に合うマネージャー研修にリニューアル

PDPは、「感動で満ちあふれる日本を創ってゆく。」を掲げてホテル・レストラン・ウェディング・バンケット・フラワー・コンサルティングの企画・運営事業を展開する“感動創出企業”です。

創業以来大切にしている「働く人こそ会社の財産である」という考え方のもと、技術と心の両軸を磨くための社員教育プログラムを充実させてきました。その1つが、マネージャーに求められる人財要件の基礎の習得を目的に毎年実施してきた「マネジメントカレッジ」(以下、マネカレ)です。コロナ禍によって4年間中断していましたが、2024年度より再開となりました。

マネカレは以前より8カ月間・全6回の終日研修という長期プログラムです。再開にあたっても、その骨格は維持することになりました。その理由について、人財開発室の中出麻衣氏はこう話します。

「当社はマネージャー育成において、ビジネスに必要なスキルの向上はもちろん、一流のビジネスパーソンとしての人格形成にも力を入れています。人格面は一朝一夕で変わるものではありません。また、マネージャー昇格の前後は非常に悩みの多い時期であり、そこにしっかり伴走してマネージャーとしての立ち上がりを支援することを大切にしています。そうした理由から、単発や短期間の表面的な研修ではなく、十分な期間とボリュームをかけることが必要だと考えています」

中出 麻衣氏

中出 麻衣氏

一方、プログラム内容については、「コロナ禍を経て市場環境や社内のマネジメントのあり方が変わり、MBA的要素などのインプット中心だった以前の内容では現状に合わなくなっていた」(中出氏)と、リニューアルすることにしました。

リニューアルの方向性を検討するため、まずは役員やエグゼクティブマネージャー(以下、EM)にマネージャーへの期待と課題についてヒアリングを実施。そこから、スキルとスタンスの両面の育成の重要性とともに、「強い意思をもてないマネージャーが増えているのではないか」という課題感が浮かび上がりました。

しかし、人財開発室では、それを「マネージャー個人のやる気の問題」と捉えるのではなく、マネージャーが意思を表出しにくくなっている環境面にも目を向けました。

「コロナ禍でホスピタリティ産業全体が大きな打撃を受け、人手不足が続いている現在。当社も採用難の影響を受け、マネージャーの重要性や役割が変化しています。その中でマネージャーが苦労している現状を、個人の問題として片づけることはできません。『働く人こそ会社の財産である』の考え方を大切に、最前線で頑張っているマネージャーの日常に本当に役立つマネカレにしたいという思いが強くありました」(中出氏)

マネカレの企画・実施にはコロナ禍前からブリコルールが伴走しており、リニューアルにも携わることに。人財開発室のこのような思いに共鳴したブリコルールは、迷いなく方向転換に舵を切りました。そうして生まれたのが、各セッションで学んだことを職場に持ち帰って日常業務で実践することを繰り返す、アクションラーニングをベースとするプログラムです。人財開発室の髙野氏はこう話します。

「目指したのは『マネージャーが輝ける状態』をつくることです。マネージャーには『管理する人』というイメージもあるかもしれませんが、私たちは『職場を良くする人』であり、会社の土台を支える非常に重要な存在だと捉えています。その一人ひとりが本来のマネージャーの仕事を楽しみ、輝くことが、会社の安定につながるのではないかと期待しました」

髙野 成美氏

髙野 成美氏

早期からの人格形成を目指し、EMも巻き込んで実施

2024年度の受講対象は約30人。マネカレ未実施期間のマネージャー昇格者に加え、今後昇格が期待されるマネージャー候補者も意図的に対象としました。

「マネカレは人格形成を重視しています。スキル育成だけならマネージャー昇格後で十分かもしれませんが、人格形成には時間がかかります。マネージャー候補者には早い段階から磨きをかけていってほしいと考えました」(中出氏)

しかしながら、ブリコルールのファシリテーター2人に対して受講生30人という規模は、適正数より多めであり、受講生の経験値に幅があることで、ファシリテーションの難易度はさらに上がります。そこで、コンテンツの進め方やファシリテーションの工夫に加え、EMのサポートを得ることとしました。

「EMをサポーターとした最初の理由は受講生の多さや多様性をカバーするためでしたが、動き出すうちに別の価値も見えてきました。コロナ禍以降、部署を超えた交流が減り、EMも自部署以外のメンバーを知る機会が少なくなっています。その中でEMがマネカレに関わることは、受講生への力強い支援になるだけでなく、EMにとっても、ミドル層の状況への理解を深める良い機会だったのではないでしょうか」(髙野氏)

インタビューの様子

「みんなでやりきった!」という自信に

マネカレは、自己理解、問題解決の手法、コーチングコミュニケーションなどを段階的に学んでいくセッションと、日常業務での実践の往復により、マネージャーとしての基礎を磨いていきます。

マネジメントカレッジの流れとセッション内容

事前課題  入社後の経験(山・谷)を整理する/課題図書からの気付きまとめ
Day1
マネカレを受講する心構え、準備/自身について理解を深める/自身のこだわりから職場をより良くする
事後課題  職場の問題を発見する
Day2
問題発見/解決策の立案
事後課題  問題と解決策を周囲とすり合わせ、アクションプランを実践する
Day3
経験学習/チームのありたい姿を描く/取組施策を考える
事後課題  ありたい姿とアクションプランを周囲とすり合わせ、実践する
Day4
経験学習(職場を動かすコツ)/サーベイを深く理解する/自分自身に向き合う
事後課題  サーベイからの考察を上司とすり合わせる/アクションプランを実践する
Day5
Day4までの振り返り(テスト)/コーチングコミュニケーション/プレゼンテーションに向けて
事後課題  アクションプランを実践する/プレゼンテーション資料を作成する
Day6
プレゼンテーション準備/プレゼンテーション/全体講評

冒頭のDay1では、そもそもマネジメントとは何か?という認識合わせからスタートしました。「何を目指して行動を変えていくかという方向性が定まり、多くの受講生のスイッチが入った」と中出氏は話します。その後、セッションを重ねる中で受講生の態度や言動は少しずつ変化。プログラム中盤Day3の頃には、著しい成長を見せる受講生も出てきました。

「大きく伸びる受講生に共通する特徴の1つは、マネカレで学んだこと・得たことを職場でしっかり実践していたこと。もう1つは、上長であるゼネラルマネージャー(以下、GM)が何かを強いるでも傍観するでもない程良い支援を行っていたことです。事務局から上長への働きかけの必要性を感じ、翌年の改善につながりました」(中出氏)

開始当初は、「研修というものが好きではない」「アサインされたから受講する」といった受け身な受講生も少なくありませんでした。しかし、受講生同士のつながりが、その意識を変えていったようです。

「コロナ禍を経て横のつながりが希薄になっていたところに、部署や社歴を超え、同じビジョンに向かって取り組む仲間がいるのだと認識できたことは、非常に効果的だったと思います。長期にわたるプログラムを、みんなでやりきった。その達成感は、一人ひとりの大きな自信になったのではないでしょうか」(髙野氏)

各セッションのファシリテーションは、ブリコルールの田中と小野寺が担当。田中は戦略的・合理的な思考が得意なロジカル型、小野寺は人の感情や直感に寄り添うことが得意なパッション型で、それぞれの個性を活かしてファシリテーションを行いました。

ブリコルール田中・小野寺

「受講生にもロジカル型とパッション型がいますが、マネージャーにはその両面が必要です。得意分野の異なるファシリテーター2人が、場面に応じて絶妙な役割分担で進めたことで、とてもバランスのよいセッションになったと思います」(中出氏)

マネージャーが仕事を楽しむことで、組織が強くなる

昨年度マネカレを受講したマネージャーのひとりに、こんなエピソードがあります。彼女はマネカレ受講前、目の前のMustに手一杯で、「マネージャーとしてどうありたいか」などとても考えられない状況でした。しかし、マネカレに参加して、業務と離れたところで自分自身やマネジメントについて考えるうちに、「こうしたい!」という気持ちが初めて生まれたと言います。マネカレを修了した今、「仕事が楽しい!」と言いながら、生き生きと業務にあたっています。

「マネカレが、仕事を楽しめない状況下にあったマネージャーを救う機会になった、マネージャーの意思が生まれる場になったのだと、確かな手応えを感じています」(中出氏)

このマネージャーからは「うちの組織は今、とても強いんです」という発言も聞かれました。マネージャー個人の成長が、取り巻く組織全体の強化につながっていたのです。

「最近、組織内で発生した問題に、マネカレを経験したマネージャーが対応して解決したという事案が増え、組織コンディションの安定・強化につながっているように感じています。さらに、組織が強くなると業績が上がるという筋道も見えてきました」(中出氏)

また、人財開発室メンバーも、マネカレの企画・推進を通じた自らの成長を感じていると話します。

「準備万端でスタートしたつもりが、蓋を開けてみると、予期せぬ出来事がたくさん起こりました。その一つひとつにベストを尽くしてきたつもりです。そんなふうに走りながら考える日々で、研修とはどういうものか、どうするとより効果的かなど、私自身も多くを学びました」(中出氏)

今年度のマネカレは、昨年度の実践を踏まえ、GMを巻き込んで受講生支援を強化するなど、改良した内容でスタートを切りました。今後も改善を重ねながら、毎年実施していく方針です。

「世間一般に管理職になりたい人が減っていると言われますが、当社も例外ではありません。その中で、楽しそうに働くマネージャーの姿は、状況を変える原動力となりえます。身近で輝くロールモデルを見て、マネージャーの仕事に興味をもち、自分もやってみたいと思うメンバーが増える。そして組織が活性化する。そんな循環を毎年繰り返していく先に、会社の明るい未来があるのではないでしょうか」(髙野氏)

株式会社ポジティブドリームパーソンズのおふたり・ブリコルール小野寺・田中

株式会社ポジティブドリームパーソンズ
取締役 瀬戸 揮一郎氏

コロナ禍でカレッジシステムを凍結していたため、メンバーの成長にコミットすることを体現出来ていなかった期間がありました。のっぴきならない事情があったとはいえ忸怩たる思いでした。そのためマネジメントカレッジを受講するべきメンバーが多く滞留してしまっていたという状況がありました。

そこで、今までは設けていなかったサポート役をEMに担ってもらうことで受講者の多さをカバーするという試みを行いましたが、これがEMに対する副産物を生んでいたことはちょっとした驚きでした。

EMの変化で多かったのは、自分の経験をベースに「こうあるべき」を立脚点にして導くというところから相手の状態を見ながら導くという導き方に変えているという話でした。やはり環境が変わる中で誰にとってもタイムリーな内容だったのだなぁと思ったのと、サポート側に回ることで各回の狙いを理解した上でワークに関わるため構造的に理解し易かったのだろうと思います。

また、GMやユニットマネージャー(UM)、マネージャー予備軍とコミュニケーションを取る中でEMにとっては「こんな簡単なことに悩んでいるんだ」みたいなことが多くあったようですが、「それって自分のメンバーも悩んでいるかも」と思うようになって、面談などで確認してみると当人にとっては大きな課題として打ち明けてくれたみたいなことがあったようです。放置していたら大変な溝が生まれていたと言っていました。自分もそうですが、昔は難儀していたことが今では呼吸するようにできてしまうって様々あると思いますが、この「昔は難儀していたこと」を忘れてしまうわけですよね。そういうことに気付いたことは大きなことだったのではないかなと思います。

いずれはベテランGMがサポート役に回るということも考えていきたいと思いました。

ブリコルール担当より

  • ブリコルール 取締役 
    小野寺 友子
    久しぶりの「マネカレ」再開をご一緒できて光栄でした。 EMのみなさんの声や瀬戸さんの思いを受け、人財開発室の皆さまと共にゼロから企画し、経験学習を回しながら8ヶ月間計6回を実施してきました。 事業環境や組織の状態に応じてマネージャーに求められることは変わります。 必要な学びをアップデートすることの重要性を感じつつ、それを受け入れて変えていくのは難しいものですが、PDPさんの経営および人財開発室の皆さまの柔軟性に驚きました。 2年目もさらにバージョンアップした質の高い学びをご提供していきたいと思っています。
  • ブリコルール パートナー 田中康之
    私たちにお任せいただいた瀬戸さんや人財開発室のお二人の期待に応えたい、その気持ちを強くもってスタートしたことを覚えています。プログラムが始まると、毎回全力でサポートいただくEMのみなさんに何かお返ししたい、そして何よりも参加者のみなさんのピュアな学ぶ姿勢に心を動かされ、自分にできることは何でもしようという気持ちが自然に膨らんでいきました。 プロとして期待に応える仕事をするのは当たり前とも言えますが、PDPさんとの仕事は一人の人間として応援したい気持ちが更なる原動力として駆動する感じです。 今年度も関わる全てのみなさんと“感動創出”経験を重ねていけるように全力で臨みます。

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