CASE #7 / 鎌倉投信株式会社

過去と未来のコンテクストを紡ぎ合い、
社員全員で次のステージへ

HOMECASE鎌倉投信株式会社

お話を伺ったみなさん

写真左より

  • 五十嵐 和人氏
    資産運用部長
  • 加藤 晃代氏
    総務部
  • 伊藤 洋氏
    システム管理部長

創業時の熱量と結束力を維持することは、多くの会社にとって簡単ではありません。2023年に創業15年目を迎える鎌倉投信株式会社は、次のステージに向けて組織力を強化するため、ブリコルールの企画/ファシリテーションによる全社員でのワークショップ(以下、WSという)を実施しました。社員のみなさんはどのような気持ちで取り組み、その経験はどんな意識や行動の変化につながったのでしょうか。WSを受けた社員3人に、古民家を改修した趣のある本社にてお話を伺いました。

創業15年の節目を前に、まず取り組む必要があったこと

古都・鎌倉に本社を構える鎌倉投信株式会社は、金融出身者4人が立ち上げた独立系の資産運用会社です。これからの日本に本当に必要とされる“いい会社”への投資を特長とする「結い2101」の運用・販売を通じ、投資家の経済的な豊かさと社会の持続的発展の両立を目指しています。

創業15年の節目を目前にし、自社が持続的発展を遂げるためにも改めて企業理念を共有し、これらから鎌倉投信が目指す方向性を皆と共に議論したいと考えた鎌田恭幸社長は、そのサポートをブリコルールに依頼しました。相談を受けたブリコルールは、社員へのインタビューを実施。多くの方が自社の理念に共感し事業に誇りをもつ一方で、自身と会社運営との間には距離感があり、また、社員間のコミュニケーションも不足している状況が見えてきました。そこでブリコルールは、皆で「これからの鎌倉投信」について議論を始める前に、すべての活動の基盤となる組織力を強化することを提案。鎌田社長は当初の依頼から方向修正し、社員と会社、また社員同士の距離を埋める施策から始めるべく全社員を対象に「組織力醸成WS」を実施することを決めました。

このWSの実施を、社員のみなさんはどう受け止めたのでしょうか。2020年のコロナ禍に入社した五十嵐氏は、「ようやくこの時がきたと思った」といいます。

「入社以来、感染症対策シフトだったこともあり、社員二十数人の組織なのにまだ直接話したことがない人もいて、会社の一体感をあまり感じられずにいました。WSをきっかけに、もっとチームとして働きやすくなるのではと思いました」

2011年に入社し、役員・社員で計8人だった創業期を知る加藤氏も、WSを待ち望んでいたひとりです。

「以前は全員がぎゅっとまとまって仕事をしていましたが、社員数が増えて鎌倉と東京(BCPサイト)の2拠点体制になり、さらにコロナ禍でリモートワーク中心になるなかで、みんながお互いの手を放して輪が拡散していくような感覚がありました。その状況がすごく心配だったので、WSの話を聞いたときは『やった!』と心の中でガッツポーズしたぐらいです(笑)。しかも対面でやると聞き、本当に嬉しく思いました」

鎌倉投信 加藤晃代氏

会社の歴史について、役員が本音でプレゼン

「組織力醸成WS」はDAY1・DAY2の全2回の構成で、全社員を対象に実施しました。

DAY1の最初のプログラムは、鎌倉投信の歴史をみんなで共有するというものです。役員4人が写真を交えながらそれぞれの言葉で、創業前の想いから現在に至るまでについてのプレゼンテーションを行いました。

このWSは全体を通して、“コンテンツ”(目に見える出来事)の影に隠れている“コンテクスト”(目に見えない文脈/信念・感情など)を重視しています。今後の鎌倉投信について社員全員で取り組んでいくには、一人ひとりが会社や各社員のコンテクストを大切にしたコミュニケーションがカギとなるからです。

この役員のプレゼンテーションにおいてもコンテクストが重視され、出来事のみを辿る表層的な説明ではなく、その裏側にあったなかなか言えなかった事情や当時の各役員の心の動きを含めて語られました。それまで役員自身の想いに直接触れる機会は少なく、「違った角度からの話が聞けて鎌倉投信の歴史認識が深まった」と五十嵐氏は話します。入社6年目の伊藤氏も、新鮮な想いで話を受け止めていました。

「創業前の想いなど、熱意を込めて話していただけたのがよかった。そのなかで、これまで気になっていたけれど質問できずにいた話も聞け、モヤモヤが解消できました。役員のみなさんの本音の部分に触れられたように思います」

こうしてWSの冒頭、役員自らが “腹を割って”話をしたことは、以降のプログラムにおける全員の取り組み方にも大きく影響していきます。

役員プレゼンテーションの様子1

役員プレゼンテーションの様子2

<WSの様子>写真を投影しながら役員が交替でプレゼンテーション。

社員同士で自分を語り合う・聞き合う

次は、社員同士の相互理解を図るワークです。初めて対面する社員もいたため、まずは事前に参加者が提出した「自分にとっての鎌倉投信」を表す写真を見ながら、誰の写真かを当てるというクイズ形式の自己紹介を実施しました。「ある人は入社時にお母さんからもらった手紙の写真を紹介し、普段の仕事では見えなかった一面を知った」(伊藤氏)など、お互いへの理解を深めたようです。

また、お客様から贈られた手作りの菓子折りの写真からは“ありたい顧客との距離感の近さ”、設立5周年と10周年に社員が役員への感謝を込めて植樹した花水木と河津桜の写真からは“ありたい社員と会社との距離感の近さ”がわかります。意図せずに集まった数々の写真によって、今の鎌倉投信を形成しているコンテクストが共有されました。

そんなウォーミングアップを経て、「自分と鎌倉投信」をテーマにしたワークへ。自分自身のストーリーを少人数グループで語り合うというセッションでは、幼少期の経験や家族からの影響などプライベートな話も多く出ました。「みなさんの人格形成の背景やルーツがわかり非常によかった」と五十嵐氏は振り返ります。また、相手を知ることとともに、「自分のストーリーは特段面白くないと思っていたが、みなさん熱心に聞いて質問してくれた」(伊藤氏)、「自分の話をしっかり聞きとめてくれて承認されていると感じた」(加藤氏)など、コンテクストの交換が深まりました。

また、多くの参加者が戸惑ったワークも。一人ひとりが「鎌倉投信でどんな活躍をしていくか」をテーマに、まず自分の強みについて4枚の絵を描き、そのストーリーを話すというものです。

「自分は絵が下手くそで、まず混乱。次は絵をきっかけに深く考え込まず、頭に浮かんだことをどんどん言葉にしてくださいといわれ、また混乱(笑)。そのときは夢中で自覚していませんでしたが、あとから他の人に『〇〇のところが一番熱が入っていたね』といわれ、ああ自分はそれが大事にしているポイントなんだなと後で気づきました」(伊藤氏)

鎌倉投信 伊藤 洋氏

実はこのワークのねらいは、あえて混乱する環境をつくり、無意識下にある自分の情熱のありかを開示すること。加藤さんも、「その場で言葉がうまく出せなかった人もいましたが、それが自分の中にモヤモヤとして残っていれば、次の機会に開くかもしれませんね」と語ります。

レゴ®を活用し、組織のあり方をみんなで考える

1ヶ月ほど後に実施したDAY2は、主にレゴ®シリアスプレイ®のメソッドを活用し、組織についてみんなで考えるワークを実施しました。

レゴ®シリアスプレイ®とは、レゴ®ブロックを使って組織・チームのコミュニケーションや問題解決などを学ぶプログラム。そのファシリテーションは、専門的なトレーニングを受けた有資格者のみ行うことができます。

社員の対話風景1

社員の対話風景2

<WSの様子>直感を大切にしてどんどん手を動かすレゴ®シリアスプレイ®

その前半では、一人ひとりが「自分を存分に使って実現したいこれからの鎌倉投信」をテーマにレゴ®ブロックの作品を制作。これまでの仕事で蓄積してきたものの結集をイメージして作った人や、たくさんの人型ブロックを乗せた船で鎌倉投信をみんなで漕いでいくことを表現した人など、それぞれの個性が光る作品が並びました。そして、出来上がった作品を見ながら、参加者同士の対話によってそこに込められた想いを共有していきます。

「緩くはまったブロックがあって、なぜピッタリはめないのか気になって聞いてみると、そこにも意味がある、と。そんなふうに『なぜ?』を質問していくなかで、その人の仕事のスタンスや鎌倉投信に対する想いを知ることができました」(五十嵐氏)

「役職や年齢は関係なく、みんな子どものような顔をして一緒に取り組みました。そういえば、創業間もない頃もこんなふうに役員も社員も近い距離感で仕事していたなあと、懐かしくなりました」(加藤氏)

鎌倉投信加藤氏、五十嵐氏、伊藤氏、BRICOLEUR小野寺

では、そんな個性的な個人が集まる鎌倉投信を、これからどんなチームにしていくのか。グループごとに個人の作品を組み合わせて「私たちがつくりたいチーム」を形にし、それを言葉で表現することにも取り組みました。ここで大事な点は、「思い通りにできたか」ではなく「想いをちゃんと出せたか」です。

「共同作業を行うとき、不思議と、批判や批評は出なかったんです。『こうしたらどうか』『それいいね』と、どんどん想いが膨れ上がっていった感じでした」(五十嵐氏)

一人ひとりの個性や考えを活かして共同制作するプロセスは、社員一人ひとりが鎌倉投信をつくっていく当事者意識の醸成につながります。最後のグループワークでは、「こういうことをみんなで考えていきたい」「これはどう取り組んでいったらいいか」など、具体的な対話が展開されました。そのなかで五十嵐氏は、鎌倉投信の明るい未来を見据え、自分自身がなすべき役割についても考え始めていました。

「鎌倉投信に対する皆さんの想いを知ることができ、『これなら行ける!』という手応えを感じました。ただ、それにはみんなの想いをまとめて引っ張っていくリーダーが必要です。そのなかで自分自身は何をすべきか考えるようになりました」(五十嵐氏)

鎌倉投信 五十嵐 和人氏

有志によるプロジェクトが発足。さらなる組織力アップの兆し

WSの実施から約3ヶ月。その後の職場に変化はあったのでしょうか。

「確実に変わりました。例えば、いつも一人で黙々と仕事を進めていた社員が職場でいろんな人に話しかけるようになって、実はめちゃくちゃおしゃべりだったことがわかりました(笑)。雑談が気楽にできる雰囲気が広がったことで、もっと仕事がしやすくなると思います」(加藤氏)

さらなる組織力醸成に向けて、自ら手を挙げた社員によるプロジェクトチームも動き出しました。そのミーティングでは活発な議論が行われ、熱が入るあまり、ふと気づくと予定時間を1時間以上オーバーしていたこともあるといいます。

「これほどミーティングが盛り上がるようになったのは、あのWSで自分をさらけ出せた経験があったからだと思います。みなさん、自分はどうしていきたいかという意見をポンポン出しますし、他者の発言に対しては否定せず、いったん受け止めてから自分の意見を言うという態度をとっています。自分もまた、そういうことが前よりできるようになったかなと思います」(伊藤氏)

「若手の方々が、高い熱量で指摘や問題提起をしてくれています。先輩だってうかうかしていたら置いていかれちゃう、私もボーっとしていられないなと、よいプレッシャーを感じています」(加藤氏)

創業時の想いや経緯を振り返り、一人ひとりの社員と会社、社員同士の距離感を縮めたWSを経て、鎌倉投信は次のステージへ、確かな一歩を踏み出したといえそうです。

BRICOLEUR小野寺&鎌倉投信のみなさま

鎌倉投信株式会社
取締役 平口 武則氏

鎌倉投信設立から15年が経とうとしています。当初は赤字続きで苦境に立たされたこともありましたが、なんとか切り抜け、今ではお客様が2万人を超えるまでに成長しました。今、まさに節目の時期。事業や商品に対する課題感とともに、組織面の課題も感じています。このタイミングで今回の組織力醸成WSを実施することは、少なからず意味があるとの想いで参加しました。

WSの冒頭では、ほかの役員と一緒に鎌倉投信の歴史を語る機会を得ました。そのときの反応から、社員のみなさんにとって既知の話だと思っていたことが、意外とそうでもないのだと気づきました。こちらは伝えていたつもりでも、理解に至るには不十分だったようです。改めてみんなで歴史を振り返られたことは、非常によかったのではないでしょうか。

私がWSのなかで特に印象に残っているのは、「コンテクストを大切にしてください」というブリコルールさんの話です。私はこれまで、意思疎通を困難にするのは知識や経験、理解力や想像力の差だと考えていた節があります。しかし今回の経験で、発言や行動の裏側にあるコンテクストを大切にすればちゃんと通じ合えるようになるかもしれない、と考えるようになりました。個人的なことですが、家族との話し方も変えてみたいと思います(笑)。

職場において、WSによる具体的な効果が出たとは、まだ言い切れません。ただ、ブリコルールという第三者による客観的な視点が入ったことは、自分たちの組織を考えるにあたってこれまでにない刺激となりました。今後さまざまなところで課題や改善点に気づくようになる、大きなきっかけになったといえるでしょう。時間がかかるかもしれませんが、効果が出てくることを長い目で見守っていきたいと思います。

ブリコルール担当より

  • ブリコルール 取締役 
    小野寺 友子

    鎌田社長とお話ししながら、この場の企画を進めていきました。コロナ禍でリモートワークの環境下入社された社員も多い中、次なるビジョンを描く活動の前に、役員も含めた社員同士がより知り合う場を持とう、組織の土壌を耕そう、という目的で全社員を3グループに分けて2日程、全6回を実施しました。スタート前は初めての試みに戸惑う声も聞かれましたが、当日は役員も社員も同じ場で同じテーマで対話に臨み、「会話や言葉にあふれ、夢や希望を分かち合う場」「人が集い、言葉が集い、夢が集い、そしてその場が広がる場」という、鎌倉投信の「志」そのものの場になったと感じます。活動が皆様主体に引き継がれていることが、とてもうれしいです。

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