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デジタルサイネージ関連事業で30年以上の実績を誇るアビックス株式会社。市場の変化に伴い多様化する顧客ニーズに対応するため密な部門連携が求められていました。そこで、2020年9月よりブリコルールの伴走のもと、「人事制度改定プロジェクト」を開始。約半年間で新たな人事制度を策定し、全社員が自立的な活用に取り組んでいます。今回は、プロジェクトに参画した各部部長と事務局の5名の方々に、プロジェクトを通じての気づきや変化、成果の実感、そして今後の展望などについて語っていただきました。
アビックス株式会社は、LEDビジョンやデジタルサイネージの製造に始まり、設置、コンテンツ、運用メンテナンスまでワンストップで提供する「デジタルサイネージソリューション」を強みとする、老舗企業です。成長し続けるこの市場で長らく事業を発展させてきた理由を、営業部部長の丸氏は「一人ひとりが顧客ニーズに真摯に向き合い、他社との差別化を図ってきたから」と評します。しかし、市場ニーズが変化し、組織も大きくなる中で、課題を感じるようになっていました。
「スポーツ施設や商業施設などが主な顧客でしたが、近年は地域への情報提供や、メディアとは別のサーバーから広告を配信する3PAS(Third Party Ad Serving、第三者配信)ツールというように用途が広がっています。当然ながらハードのみならず、コンテンツ企画やその運用なども含めた提案が求められるようになり、もはや個人商店的な戦い方では限界があり、密な部門連携による組織戦にシフトする必要があると感じていました」(丸氏)
その課題感は、他の部長も感じていました。たとえば、グループ会社で新規事業部を束ねる三重野氏は、「他部門との連携を図っていかなければと考えてはいましたが、具現化する方法が見いだせないでいました。個人に依存するだけでなく、それを組織の力へとつなぐことができず、人材を活かしきれていないという反省もありました」と語ります。
また技術本部本部長の谷氏も、「技術部門における中長期的な目標は、ともすれば他の部門にはなかなか価値が見えにくいもの。また、目標とする“良いもの”が全社が目指すゴールと合っているのか、明確な確信が得られない不安もありました」と語り、「技術の目標設定は曖昧になりがちで、日々の業務に忙殺されて、半年間も手がつけられないこともありました」と振り返ります。
誰もが課題感を抱えつつも、「部長自身が各部門のトッププレーヤーとして個人商店になっていた」(丸氏)という状況で、部門間でも十分な連携ができず、具体的な取り組みにはつなげられずにいました。
そんな状況下で、廣田武仁氏が2019年に代表取締役社長に着任し、様々な改革が着手されました。プロジェクトの事務局を務めた取締役副社長の桐原氏は、「それが大きな転機になりました」と語ります。
「先代社長は社内の課題を見抜いており、廣田に解決を委ねたのでしょう。着任後まもなくして、廣田から『個人が”自分エリア”で頑張るのではなく、全体を見ながら自立的に成長し、全員が貢献する会社にしていこう』というメッセージが発信され、それを後押しする人事制度をつくろうという機運が高まりました。そのためには制度運用の要となる部長の意識と成長が必須であり、それを促すプロジェクトが求められていました」
しかし、管理部はあらゆる業務を担い、上場企業としての対応も多く、課題感はあっても、時間とノウハウ不足で制度改革までには踏み出せないジレンマを抱えていました。そこでブリコルール社が人事制度づくりに伴走することになりました。
「最初に当方が目指す組織像についてお話をした時に、“全員が貢献する会社”にするためには、マネジメント層が要であり、小野寺さん、西村さんに『マネジャーが武器として使える人事制度にするということですね』と言われた時には、『わかっていただいた!』という安心感がありました。制度づくりの目的を明確にしたことで、その後もスムーズに進められたと思います」(桐原氏)
「まずは現状の課題について、若手・中堅・管理層まで丁寧にヒアリングをいただき、『ずっと評価シートが変わっていない』『ベテランと新人が同じシート?』など、なかなか管理部や経営層には伝わってこなかった”会社や制度に関する問題意識やリクエスト”をしっかり引き出すことができました。それができたからこそ、これからどんな組織・どんな未来を作りたいかという、ポジティブな話に転化できたのではないかと思います」(管理部・石渡氏)
ヒアリングの内容をもとに、経営層がブリコルールのサポートも得ながら、目指すべき組織の具体化と、それを実現するための人事制度をまとめていきました。「ONE TEAM!ONE AVEX!」という全社方針に則り、さらに全社・チーム・個人の具体的な「あるべき姿」へと落とし込んでいきました。
「全社の目標からチーム目標を落とし込み、さらにメンバーの目標へとつなげる。そのためには、社長ではなく、まず、それぞれの部長が、コースやグレードに応じて明確な指標のもとで評価を行う、という進め方には、すごく納得感がありました」(桐原氏)
その上で、何を評価すべきか、どんな行動を促すかを部長全員で議論しました。
忙しい部長が定期的に集まるというのは、なかなか難しいこと。しかしながら、廣田氏の強力な後押しもあり、部長ミーティングは順調に進みました。
「事務局としては、正直、時間を調整してくれるのか心配でしたね。しかし、回を重 ねるうちに全員の意識が大きく変化していくことを感じました。このミーティングを通じて、当人たちはもちろん、おそらく周囲からの部長のイメージも、チームの“エース”から“リーダー”へと大きく変わっていったように感じます」(桐原氏)
部長同士で話す内容も、日を追うごとにマネジメントに関する事項が増えていきました。それぞれ部長の中にも、変化が生まれていたことを自覚していたといいます。
「私自身、一番売上を上げているという自負もあり、個の力で走っている感覚がありました。他のメンバーともフラットなつもりでいたので、当初はグレード分けには違和感があったんです。でも、役割やグレードを決めて、それを実践することで、チームとして力を上げることで成果も上がる。それが、組織を作るということであり、自分の役割であるということを実感しました。いわば、『武器としてのチーム』を手に入れるように感じました」(丸氏)
「今までの人事制度では、最終評価者である社長の前に補足的に評価を行うという感覚でいました。それが、この制度では、会社やチームのゴールと照らし合わせつつ、個人の給与や生活、キャリアまで考えて評価しなければならない。相当な覚悟をもって取り組まなければならないと自覚しました」(谷氏)
「私は新しい人事制度づくりにははじめから期待がありました。制度に正解はないとしても、何より大切なのは自分たちで“変化”を起こせたということ。新しい制度で能力を伸ばし、会社に貢献し、文化をつくる。その先に、どんな組織になるのか見届けたいです」(三重野氏)
人事制度についての議論を重ねるにつれ、チームづくりに対する意識の変化の他にも、他部門の仕事のあり方や関係性というような部門間連携について自然と考えることが増えたといいます。そして、その感覚は自然と次のステップである「メンバーセッション」にも活かされることになりました。
経営層が指針を示し、部長が協力して制度設計を行なった人事制度を社内に浸透させるにあたって、「メンバーセッション」を実施。部長がテーマ別の部屋の主となって、社員が4〜5人1グループとなってランダムにZoomの部屋に入室してディスカッションするというスタイルで行なわれました。
「なかなかない経験で、すごく楽しかったですね。みんな能力も、スキルも、性格も違う。自分と全く異なる視点からの指摘も多く、制度について意見をもらって、調整案を出してというように、短時間でPDCAを回しているような感じでした。特に他の部門の目標設定などに関わらせていただいたのも視野を広げるいい経験でした」(三重野氏)
「普段の業務では仕事で関わる人としか話さないことが多いので、こうした機会はありがたかったです。この経験で、全社が新しい制度に向かって進んでいる体感を得ることができました。今後も他部門の人とも違和感なく話し合える共通言語ができたように感じます」(谷氏)
「他の部門のメンバーも連携したいと考えていたんですよね。それを再確認できたのは大きな収穫でした。組織や制度に対する思いを自分の言葉で伝え、相手の話を聞けたこと、それによってみんなで共通認識をもって進んでいる実感が得られ、組織全体の”本気”を感じました」(丸氏)
そう話す部長たちの本気度は、そのままメンバーにも伝わっていたといいます。管理部の石渡氏には、「会議では話せないことも話せた」「異なる視点で話す人の意見が参考になった」など、メンバーセッションへの好意的なコメントが多数寄せられました。そして、この手ごたえは一人ひとりの制度導入に対する真摯な姿勢につながっていきました。
制度が実際に導入されて2ヶ月足らず。具体的な成果はこれからながら、メンバーを含め部長自身も、「変わる」「成長する」ことに大いに期待があるといいます。
「目標と制度があれば、それにあいのりするだけで成長できると考える人も少なくなかったと思います。今回のプロジェクトは、他力本願な姿勢を排して、メンバーが"自分の課題のあり方”を意識できたことが大きな収穫です。たとえば『去年に3割増し』という目標設定ではなく、『会社が求めている方向性にどう貢献できるか』という観点から、チームのあり方を考え、それに基づいて自らの目標を設定できること。今後はそれが根付くことに大きな意味があると思います」(谷氏)
「新規事業部は変化の激しい世界にあり、時に仕事への期待と評価に齟齬が生じる時もありました。しかし、ビジョンが具体化されたことで、ロールプレイングゲームのように”目指すべき城=目標”と”覚えるべき呪文=スキルや経験”が明確化され、誰が誰を評価をしても変わらない”拠り所”を得たように思います。実践はこれからながら、それぞれのモチベーションがコントロールしやすくなったことで、ベテランも新人も階段を登るように自立的に成長しようとするでしょう。そうした人が集まることで強い組織になっていきたいですね」(三重野氏)
「成長するには“意識を変えること”が重要と気付かされた取り組みでした。組織の成長にはチームや個人の成長が必要ですが、逆にチームや組織を意識することで個人が成長できる。だからこそ、メンバーの成長を促すには、自分が部長自ら成長を意識し、成長し続ける必要があると感じました。制度が浸透して、そうした好循環が生まれることを期待しています」(丸氏)
「管理部としては、人事制度はあくまで手段であり、それを使ってどんな組織にしていくか、ということにフォーカスしていきたいと考えています。そこで期待しているのは、一人ひとりが自立して自ら成長していける組織です。この制度を導入することで、なにかしら緊張感を伴う可能性もありますが、上手くモチベーションコントロールの方に昇華させ、創業以来の社風でもあるアットホームなところは残していきたいと考えています」(桐原氏)
課題を感じながらも一歩を踏み出せなかった頃から、トップダウンでのプロジェクト開始、ヒアリングによる状況確認や部長としての覚醒、メンバーへの浸透と、目まぐるしく展開し、これから本格的な実践フェーズとなります。最後に、ブリコルールの導入ソリューションを振り返り、「時間がかかったのは大変だったが、時間をかけたからこその満足感があった」と皆さんそろって笑顔を見せられました。
今回のプロジェクトは、我々がビジネスをしているマーケットの急速な変化の中、今までの仕事の仕方やスピード感、組織の在り方や連携、社員の意識改革、そして我々の会社の目指すゴールについても大きく変えなければ、マーケット変化に置いて行かれるだけでなく、企業としての存在価値が危うくなるという相当な危機感の中、根幹になる人事制度改定についてブリコルールさんに相談するところからスタートしました。
当然着任後様々な施策を並行で実施する中での、変革の基盤となる人事制度改定という位置づけでしたが、ブリコルールさんは当社の課題と私が目指したい方向を共有頂いただけでなく、実際の部長やメンバーの現在位置を把握頂き、人事制度を改定するというテーマのみならず、背景にある一番大事な「会社が今大きく変化しなければ。。。」という大命題をメインに据えてこのプロジェクトに丁寧に伴走しゴールへ導いて頂けました。代表の私の立場からすると非常に話が噛み合うというか、経営者との目線が合う仕事をして頂いた事は大変ありがたく思っています。これからますます変化のスピードを上げていけそうです。