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  • 2018.11.08

    隠すのは悪か、公開するのは怠慢か。

    野元義久

    何の話かというと、“経営成績や経営管理指標をどこまで公開するのか?”についてです。

    また少し前(いや、ずいぶん前・・24年も前とは驚きますが)、私が新卒入社して7年目に待ちに待ったマネジャー職に就かせてもらった時の話から。

    (水田も書いていましたが)新卒で入ったリクルート社は、教育心理を学んだ創業者が経営にも心理学を活かした会社です。“情報が人を熱くする”というキャッチフレーズは社内でも実践されていて、社内情報共有の活動にはかなりの投資をしていました。
    ※週刊で全社員に配布される「週リク」や社員の実家まで届く「かもめ」は有名ですね。

    戻ります。
    隔週(かな)でマネジャーに届く限定の社内広報冊子がありました。
    私はこれを初めて読んだ時、「おおおーー、こんなに俺の知らない世界があったのかーー!」と感動して課内メンバーに回覧しました。

    当然ながら・・隣の先輩マネジャーさんに叱られました。“限定である意味”を考えよ、と。
    正直なところ「そうかなぁ・・言うほど隠すことなんてないじゃん。それより、これを読んで目線が揃ったらメンバーからの提案の精度も高くなるし、何より奮起して提案量も増えるはず。そして情報共有の時間も縮減されるよ!」という気持ちはありましたが、まぁルールはルールだよな・・と以降の回覧はやめました。

    なぜ、この話を持ち出しているのかというと、クライアントワークのたびに、“経営情報をどこまで、現場に情報公開するといいのか”という問いがずっと巡るからです。

    例えば、企業活動の目標の一つ“最終利益”までを公開するのは良いことなのか?
    公開すると、現場の経営者目線は醸成されそう(儲かっているか、どうしたら儲かるか、は全員にとって大切な命題)ですし、予実管理のスピードは上がりそう(現場で管理した利益額を経営が知るスピードも上がる)です。
    かたや、利益という「絶対指標」は現場の目をそこに集中させ、他の観点を排する力を持っています。かつ、短期の目線に陥りがちです。

    24年前に戻ります。

    私が所属していた事業は当時、急成長していました。“成長期”です。
    明らかなリプレイス対象が存在する市場のNO.2でしたから、言葉は乱暴ですが営業としては“数撃てば当たる”という時期です。その頃の営業現場の指標は“新規契約件数”であり、営業パーソンの日々の管理指標は“新規訪問数”でした。ちなみに一日あたり3件新規/2件既存の訪問を継続していれば“基本、褒められる(たとえ売れずとも怒られない)”という徹底ぶりでした。これは理にかなっています。大会社の1事業部という財的後ろ盾があってのことですが、この時期に注力させるのは市場シェアの獲得スピードが正解です。

    次に市場は“成熟期”を迎えます。
    一定の市場シェアを獲得し、NO.1になろうかという時期に経営はマネジメント指標を“利用度数”に転換します(この事業は通信インフラビジネスです)。営業現場の指標は“1顧客あたりの利用度数”となり、日々の管理指標が“新用途の提案件数”へと変わります。ユニークな提案を促進するための表彰制度も設けられ、数字目標の達成と同じくらいに新用途実現の称賛機会が提供されました。この時期は少し先の利益を最大化する挑戦を注力点とすることが理にかないます。

    やがて“衰退期”となります。
    この期は“新サービスの契約数”と“既存サービス提供の生産性向上”が指標となり、どちらかと言うと収益確保にシフトします。具体的には営業パーソンが直接担う仕事と、センターや業務委託さんが担う仕事を明確に区分してコスト管理も徹底していきます。体制としても新規営業専任はなくなり、営業現場は“粗利”が指標になりました。

    昔話が長くなりました(笑)。

    経営が現場に課す指標は市況や成長度をみて、デザインしなければならない。

    考えずに最終利益までを現場に課すことも、思いつくこと全ての指標を課すことも好手ではありません。もちろん隠そうというのでもない。経営環境や社内のマネジメントレベルを観察し、“今の現場に注力してもらうことは何か?”を徹底的に考えて管理指標とする。そして、その指標以外は視野から外して現場には邁進してもらう。後は経営が責任を持つという基本姿勢が大切ではないでしょうか。

    隠すとは言いませんが、見せないことは決して悪ではない、
    そして、すべてを見せてすべてを求めるのは、怠慢な経営かもしれません。

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