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  • 2018.04.03

    数学に身体の息吹を(「数学する身体」森田真生著より引用)

    水田道男

    桜の名所、目黒川沿いから、昨年コンクリートジャングル渋谷へオフィスを移転した。今年の目黒川の桜は、好天にも恵まれ、さぞ見事に咲き誇っていたのであろう。渋谷の駅からオフィスまで不機嫌そうな顔をした人々に囲まれながら歩く道中に、手放したものの大きさを感じてしまう。

    この桜の時期、我々の業界では、新人の受け入れが一大イベントとなる。平均年齢40歳代(5月に30代の期待の若手が入社するが、その彼を入れてもこの高齢化・・・)のブリコルールに新人研修を託して頂ける奇特な会社は無いが、受入側の態勢を整えるご支援は、私達もさせて頂いている。新人研修では、学生と社会人の違いということを基層に様々なプログラムが企画されている。社会構成主義者のケネス・ガーゲンの「言葉が世界を作る」という説に従うならば、新人は新しい言葉を習得することで、新たな世界を理解するということになるのだと思う。

    ブリコルールでも、先ほど触れた新たなメンバーの受け入れの準備の一つとして、我々が普段何気なく使っているフレームワークや考え方を明文化することを始めている。
    以下は、現時点での目次の一部である。

    ・仕事の抽象化
    ・時間軸・空間軸
    ・表層・深層
    ・リアル接続法
    ・プロフェッショナルとしての規範・価値基準
    ・歴史・時代を見るメガネ①(成長期と定常期)
    ・歴史・時代を見るメガネ②(ロジスティックス曲線)
    ・インプットがMUST(普通との相違、ないモノの指摘の為には常識の蓄積が必須)
    ・モノの並べ方は3つ(大きさ、時間、予め定められたもの<50音順など>)
    ・構造と表層の整合(2×2の箱の図。上部と下部の不整合が問題となる)
    ・ベン図 (包含関係?、共通部分ある? ない?、ねじれの位置?)
    ・コミュニタリアン+α的発想(自分の認識範囲より少し広げて考えてみる)
    ・××合理性(「経済」や「論理」ではなく「納得」や「幸福」などの主観が重要)
    ・本質×本質(Aの本質とBの本質から何かを生み出す発想法)
    ・足し算発想(手触り感あり。直感的。掛算・割算に毒された現代思考排除の意もあり)
    ・引き算発想(取り去った時に残るものは何か? 違う取り去り方はできないか?)
    ・自説の適用条件の理解(どんな条件下で自説が有効か制約条件を知らないと二流)
    ・行動開発プロジェクトの目的
    ・働く志向の6分類
    ・女性活躍推進におけるサービス設計の考え方
    ・レベル4 リーダーシップモデル
    ・発達段階モデル(個人)

    当然、目次だけでは内容はよく分からないと思うが、一つ一つの項目に対する紐解きを社内で進めている。その中で、私に強いインパクトを残した考え方の一つが、「足し算・引き算」発想である。他のメンバーが提示した項目だが、私が暗黙的・無自覚に大切にしたい、と思っていたことがこの中に含まれているように思えた。

    金融の世界って、掛け算・割り算的だよな・・。
    企業・事業価値の算出はDCFにしろマルチプルにしろ、極めて演算的。企業・事業の収益性の分析は、ロジックツリーで割り算と掛け算の連鎖だし・・・。社会人の最初の8年は、事業金融のど真ん中にいて、この掛け算・割り算の言葉に囲まれ、その世界に少し違和感を感じた(あるいは、適応し切れなかった)ことが自分の今をつくっているのだと思う。
    そして、経営管理の世界も・・。昨対比、投資対効果、パーヘッド、MBO(達成率)等々。組織・人事コンサル会社で、管理職の役割を10年ほど務めさせて頂いた。得難い経験を積ませてもらい、今でも感謝の気持ち以外にないのだが、残りのキャリアをこの言語体系の中で過ごすことは、自分の生き方とは違うということを自覚した。

    そしてブリコルール。
    やらないこと・出来ないことを明確にして、自分たちのドメインを引き算的に設定した。
    社内に経営数値目標はない。お客様の顔をみながら、足し算で仕事を積み上げている。あるのは、その結果としての数値の目安。人や職場(組織)の変化は、足されたこと、引かれたことを目視したいから、演算的な成果測定は二の次だ。

    「下り坂をそろそろと下る」という本の中で、演出家の平田オリザさんは次のようなことを語っている。

    最低賃金の引き上げ、ブラック企業の取り締まり、社会的少数者の権利の保障、やらなければならにことは山ほどにある。しかし、私はその先の社会も夢見たい。 (中略) だが、本当に、本当に、大事なことは、たとえば平日の昼間に、どうしても観たい芝居やライブがあれば、職場に申し出て、いつでも気軽に休みがとれるようにすることだ。職場の誰もが、「あいつサボっている」などと感じずに、「なんだ、そんなことか、早く言ってくれよ。その仕事なら俺がやっておくよ。舞台を楽しんできな」と言い合える職場を作ることだ。
    (以上、引用)

    私も本当にそう思う。そして、この世界は、一人ひとりの状況をみた足し算・引き算による創意工夫でないと実現しないと思う。女性管理職比率のように演算性の高い掛け算・割り算言語を多く流通させるだけでは現場は動けないし、人の心も変らない。

    新たなメンバーを迎えるこの時期に、自分達がどのような言葉を使い、どのような世界を作っているのか?それを確認してみるには良い時期ではないだろうか。

     

     

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