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  • 2019.09.06

    「プレイヤーからマネジャーへの転換」vol.10_最終回

    野元義久

    企業における最も古典的な断絶であり、ダイバーシティ対応への鍵ともなる、
    「”優秀な個人プレイヤー”から”チームを率いるマネジャー”への転換」をテーマに連載しています。
    月刊人事マネジメント(株式会社ビジネスパブリッシング)

    vol.10 ◆◆なぜマネジャーの道を選ぶのか◆◆

    企業における最も古典的な断絶であり、ダイバーシティ対応への鍵ともなる、「”優秀な個人プレイヤー”から”チームを率いるマネジャー”への転換」をテーマに連載しています。

    いよいよ最終回です。これまで、マネジャーへと転換していくための心の持ちようと、どのように行動するといいかを紹介してきました。「マネジャーとして、もっと上手くやるにはどうしたらいい?」とか「マネジャーになるために、どんな準備をしておくといい?」という声に応えようと書いてきました。
    しかし、実際はそんな声ばかりではなく「マネジャーなんて本当に必要なの?」「出来ればマネジャーはやりたくないな・・」「“マネジャーになることを目指そう”なんて言われるけど、忙しいばかりの上司をみていると正直なところ割に合わないと思う・・」という逡巡の声をたくさん聞きます。いずれもが会社から将来を期待される若手諸氏の生の声です。
    研修やコンサルティングで出会う方々も、私との関りが深まり、先に書いた“心の持ちよう”を考え、そして私からの丁寧なおせっかいが繰り返されるにつれ、次第に心の声が表に出てきます。そして一人の心の声がきっかけとなり、たくさんの本当の声が現れます。この場面に身を置き続け、私自身も考えが広がり、深ってきました。

    今号は9回のまとめに代えて、やがて訪れる大切な岐路の問い“自分はプレイヤーではなく、マネジャーという道に進むのか?”を考える時のヒントを紹介します。答えは自分でみつけるしかないお題ですが、一つの考え方として、この号が参考になれば幸いです。

    成長を促すマネジャーへの挑戦

    「私もマネジャーをやるべきでしょうか?」
    15年前までは、誰に対しても即答で「もちろん!」と答えていました。
    その理由は“成長できるから”です。プレイヤーとマネジャーは別の仕事です。ゲームのルールが変わるので、知らなかったことを知り、やがては出来なかったことが出来るようになる・・、よってビジネスパーソンとしての成長を感じます。また成長したマネジャーには、さらに次の大きな挑戦機会が訪れるので成長が進みます。自分の可能性が拓かれ成長し続けられる道は魅力的だと思いませんか?
    さらに、マネジャーはプレッシャーに晒されるので成長せざるを得ません。
    プレイヤー時代よりも大きなチーム単位の責任と権限を預かるので、気が抜けません。なぜか周囲には、「プレイヤーで活躍したんだからマネジャーも出来るでしょ」という幻想もあります。上手くいくことばかりではないので、追い込まれたり、自信を無くしたり、時には自分を見失ってしまうこともあります。特にプレイヤー時代に目覚ましい活躍をしていた人ほど、役に立たない自分を感じてしまうことがありますが、長い目でみればその過程も“人としての成長機会”と言えるでしょう。メンバーの葛藤に寄り添いながらも叱咤激励できるマネジャーになるためには自分自身の葛藤体験が糧になります。

    会社を選び直す

    さて、15年後の今、私はどう答えるか。
    今も変わらず“もちろん、マネジャーを経験しましょう!”なのですが、前置きをするようになりました。
    “まず、この会社でマネジャーを務めるのかどうか、会社を選びましょう”という前置きです。
    新卒、中途にかかわらず就職のときに会社を選んでいますが、マネジャーという役割を務めるタイミングで“もう一度選びましょう“と言っています。それは、”あなた“と”会社“を分けにくくなるからです。メンバーやお客様・取引先から、あなたが”会社の代表“とみられることを心地よく受け容れられますか?あなたと会社のこれからのつながり(エンゲージメント)を確認して、この会社の代表になることを引き受ける決断です。
    具体的に考えてみましょう。多くの会社には経営理念(ミッション・ビジョン・バリュー)が掲げられています。これは、会社が広く世の中(お客様・社員・取引先など)に約束していることです。今、十分に出来ていなくても目指している姿です。
    この経営理念に対して、
    ① あなたの上司や経営層は理念を基に、毎日の大切な判断をしているか(言行一致の姿勢)
    ② あなたの力で理念の体現をもっと進められそうか(貢献の可能性)
    というチェックをしてみてください。
    両方が“NO”の場合は、マネジャーを務めることをおすすめしません。
    ① のみが高い場合はまだタイミングではないのかもしれませんし、②のみ高い場合はかなりの試練に挑戦するということを心しておきましょう。
    もちろん、他にもたくさんのチェックしたい項目はありますが、まずは“この会社の代表”として胸が張れるかどうかを確認すべきだということです。引き受けるならば“この会社の理念を自分が先頭に立って広めていく!”とコミットして欲しいのです。

    マネジャーとして拠り所を持つ

    さて、15年前とは環境が変わりました。
    日本においては物質的な豊かさの下で、市場のパイを奪い合って規模を拡大していくという経営の在り方に疑問を持つ人が増えました。これは新しい考え方ではなく、元々、人として持っていた疑問が、環境保護やダイバーシティ対応、人間本来の幸せへの回帰、という潮流で表に出てきたのだと思います。伴って、なぜこの会社が存在するのかを真面目に考える(経営にとっては、指摘される)機会が増えました。この流れはきっともっと加速します。これが私の15年の変化にも影響しています。
    若いほどに、競争に勝つこと・規模が大きくなることや報酬だけを求めない人が増えています。組織の成果責任を担う立場にあるマネジャーは、これらメンバーの多様な声を無視して進められません。マネジャーの日々の判断には矛盾がついてまわりますが、一様なマネジメントが効きにくい世の中では葛藤する場面が連続していくわけです。その葛藤の拠り所は“なぜ、あなたがその会社でマネジャーを務めるのか?”です。曖昧のままで進まず、勇気をもって立ち止まってみて考え、選んでください。この足踏みは自分の拠り所の発見につながるはずです。
    拠り所はメンバーにも影響します。職場において心理的な安全性を保ちながら、一方でメンバーに高い期待を迫るには自分なりの信念が必要です。
    私の場合、十数年経っても当時のメンバーが謝意を伝えてくれるのは私からの”厳しいフィードバック”です。思い返すと、自分自身も葛藤している局面で発した言葉ほど、当時のメンバーの記憶に刻まれているようです。フィードバックするためは、拠り所を持つ必要があります。

    最後に、

    “やってみて、やり直せばいい”ということをお伝えしておきます。
    “葛藤”とか“信念”という言葉を使い、みなさんには覚悟を迫りました。覚悟があることに越したことはありませんが、“やってみないとわからない”というのも確かです。特に若手のうちは、やってみて、学んでみて、それから本当にマネジャーとしての道を進みたいかを決めても遅くはありません。これまでの9回の連載では、そのためのヒントを書いてきました。みなさんの参考になることがあったなら、心から嬉しく思います。

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