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  • 2019.04.05

    「プレイヤーからマネジャーへの転換」vol.5

    野元義久

    企業における最も古典的な断絶であり、ダイバーシティ対応への鍵ともなる、
    「”優秀な個人プレイヤー”から”チームを率いるマネジャー”への転換」をテーマに連載しています。
    月刊人事マネジメント(株式会社ビジネスパブリッシング)

    前号では、マネジャーという視界で大きなテーマに取り組んでいくための「周囲を動かす支援のスキル」を紹介しました。今号は、「問題の発見」です。

    vol.5 ◆◆思い込みの枠を出てマネジャー視点で問題を発見する◆◆

    何も問題が浮かばない・・という人は少ないでしょう。
    私たちは日ごろから自然と「もっとこうなったらいいな」「ここは違和感あるな」という感覚を持ちます。人の習性でしょう。この違和感を実際に解決したいと思ったら、それはあなたにとって”問題だ“ということですね。
    今回はマネジャーの視界で捉えたい問題とはどのようなことか?を考えてみましょう。

    どの類型の問題に時間を費やしているか

    まず、問題には ①問題発生型 ②問題設定型 ③問題創造型 があります。

    ① 問題発生型:定めた(あるいは定められた)“ありたい姿”と“現状”の差
    多くの仕事はこれにあたります。特に現場の若手メンバーは、上位者が求める姿との差を埋めることに努めていると思います。

    ② 問題設定型:当初に定めたありたい姿よりも“高いレベルに設定するありたい姿”と“現状”の差
    自分たちの可能性をポジティブに見立て、自主的にバーを上げる場合がこれです。あなたの職場に、もう少し高い値を目指せそうだ、ということはどれくらいあるでしょうか?

    ③ 問題創造型:既存の延長ではなく“新たに掲げるありたい姿”と“現状”の差
    まだ誰も声を上げていないこと、あるいは既定路線ではなく新たに進む方向を掲げることで生まれる問題がこれです。私は②が改善、③は改革と呼んでいます。

    さて、私たちはそれぞれの類型の問題解決にどのくらいの時間を費やしているでしょうか?
    経営の難しさは「取組むテーマ自体が正しいのか否かの確証の無い中で、自ら問題を設定し、答を出していく」ことにあります。経営の一端を担うマネジャーの準備段階として、定められた“ありたい姿”とのギャップを追いかけるだけでなく、②や③のように“自ら高いバーや新しいありたい姿”を掲げ、自らに取組むテーマを与えていく経験をお勧めします。

    問題発見の切り口を変える

    毎日同じ道を歩いて通勤していると、周りの風景が目に入らない。道端に花が咲いたことも気づかない。だけど、旅先ではその街の様子を丁寧に観察してしまう、路地の奥が気になって覗いてみる・・という経験はありませんか?
    慣れ親しんだ職場を新しい気持ちで観察することは難しいかもしれません。適切な視点で問題を発見するための、観察の切り口を紹介します。

    ① 時間軸を変える。未来から今日を観てみる。
    役割として、経営層は長期&全体で思考し、現場は短期&個別の営みに集中します。ということは、マネジメントに就く準備段階にいるみなさんには、これまでよりも長い時間軸と全社的目線で事業や職場のありたい姿を考えることが必要です。
    「どのくらいの時間軸が適切ですか?」とよく訊かれますが、「経営が中期経営計画などで示している時間軸」をお勧めします。組織の中でよくある”上と下がかみ合わない“対話の多くは、時間軸の違いから生まれます。P/Lで話しているのか、B/Sで話しているのか、くらい違っています。
    これからミドルとして、現場と経営の間を繋ぐ役割を担うことが期待されます。時間軸を柔軟に切り替えて観察・思考することは、上下を繋ぐ練習にもなります。

    ② 空間軸を変える。外から自分の職場を観てみる。
    効率を上げよう、生産性を上げようとすると、インプットが減ります。たとえば隣の部署から自分の職場に求められていること、顧客から、社会から期待されていることなどに耳を傾ける余白の時間をもたなくなります。日々の生産活動に没頭すると“今日も昨日の継続でいい”というマインドになり、大切な問題に気づかなくなります。
    最近、“いくつズラした人”とコミュニケーションしているでしょうか?例えば、最近じっくり話した人が自分と違う項目をカウントしてみます(職場/部門/役職/会社/業界や世代/性別/国籍/信仰など)。同じ職場で世代が違う人は「1カウント」、隣の職場だと「2カウント」。同じ業界の違う会社の経営者は「3カウント」、違う業界・世代が違う・国籍が違う人は「4カウント」という感じです。
    私の知人は“飲みに行くなら2個ズレた人”と決めているそうです。3個以上ズレると話がかみ合わず、互いのコンテクストの違いを念頭に置きながら対話する練習になるそうです。もちろんコミュニケーションの手間はかかりますが、新しい情報に出会う確率が上がります。
    思い込みは自分一人では気づきません。働き方改革が進み、日常の余裕はなくなる一方ですが、意図的に“ズラす”ことが事業や職場の問題を発見する鍵になるはずです。まずは、最近話していない違う部署の同期生や違う業界に勤める学生時代の同窓生と時間を持ってみることから始めてはいかがでしょう。

    発見したらフィードバックをもらう

    慣れ親しんだ日常から出て、違和感を持ち、新たな問題を発見したら、周囲に話してください。
    「そうだよね!一緒にやろう!」という反応もあれば「無理だよ」「自分はそこが問題だとは思わないな」「もっと違うことに取組みたいんだけど」という声もあると思います。
    大切なことは、周囲の賛同を集めていくことです。発見した問題は一人で解決できるレベルではないはずです。

    問題解決が進まないのは、解決策が好手でないのではなく、問題認識が揃わないからです。ありたい姿の具体像が揃い、現状の事実認識が進めば、協力者が増えて打ち手のアイデアも集まります。適切な問題を設定するために、そして周囲の力を借りるためにもフィードバックを募ります。
    特に自分の上長との対話が大切です。時間軸、空間軸が適切なのか?重要度・緊急度は揃っているのか?自分に期待されている役割は理解出来ているか?などがわかります。徒労に終わらないためにも、丁寧に試みてください。

    最後に、先に紹介した知人から「“葛藤”と“違和感”は混同してはいけない」と教わりました。葛藤は問題解決に向かっている姿勢ではない、ということです。違和感が問題発見のスタートです。人工知能よりも、違和感を持つことは先んじていたいと思います。

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