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  • 2019.02.07

    「プレイヤーからマネジャーへの転換」vol.3

    野元義久

    企業における最も古典的な断絶であり、ダイバーシティ対応への鍵ともなる、
    「”優秀な個人プレイヤー”から”チームを率いるマネジャー”への転換」をテーマに連載しています。
    月刊人事マネジメント(株式会社ビジネスパブリッシング)

    vol.3 ◆◆自分の仕事のノウハウを後進に伝授する◆◆

    前号ではプレイヤーからマネジャーへと転換するにあたって、まず、これまでのプレイヤーとしての役割を“肩から降ろす=仕事を引く”という考え方を紹介しました。
    今号はその“引く”ステップの詳細へと進みます。マネジャーへの転換期に限らず、あなたの仕事を後輩や部下に引き継いで、任せ、育てていく時のヒントになると思います。

    引くことの怖さを味わう

    自分が担ってきた役割を後輩に渡すとき、3つの怖さを感じると思います。
    ・彼・彼女はこの仕事が出来るようになるだろうか。
    ・引き継いで、任せ、育てるための労力が割けるだろうか。
    ・これまでの仕事における効力感や貢献感を、他の何で感じることが出来るだろうか。

    これらの逡巡は、これからのステージアップの度に感じることです。きっと、ずっと付き合っていくことでしょう。この怖さがあるから、丁寧に引き継ぐ相手の様子を観察し、丸投げでない渡し方ができるのです。この感覚をすっとかわすより、味わうくらいで丁度良いと思います。いかがでしょうか。

    上手いやり方をノウハウにする

    実はもう一つ、怖くなる理由があります。
    ・自分のやってきたことを上手く伝えられるだろうか。

    ここを考えてみましょう。
    多くの人が後進にHOWを伝えてしまいます。「この場合、こうしたらいいよ」という内容です。
    お気づきだと思いますが、このやり方では“全てのケースにおける”HOWを一つ一つ伝えなければならなくなるのです。これでは労力がかかってしまいます。

    まずは、自分が上手くいった理由を紐解く必要があります。
    紐解く方向は、4つです。
    ・何のために、そうしたのか?
    ・他にはどんなやり方があるのか?
    ・具体的にどのようにやったのか?
    ・他のどんなケースの時に、このやり方が活きるのか?

    このように、自分の経験から学ぶことを、David A Kolb氏は「経験学習サイクル」と呼んでいます。
    具体的経験→ 内省的省察→ 抽象的概念化→ 積極的実践
    を意識して回すことで、実践知が学習し続けられるということです。

    “何のために、そうしたのか?”は積極的実践で言う「狙い」や、その狙いに対する実際の「反応」=具体的経験に焦点を当てています。
    そして、“具体的にどのようにやったのか?”は内省的省察にあたり、 “他のどんなケースの時に、このやり方が活きるのか?”が抽象的概念化となります。

    ところが、シンプルなサイクルながらも、なかなか上手く回せる人がいません。
    その大きな理由は、2つです。
    ・経験・事象を客観的に受け止められない(内省的省察)
    ・新たな学びの発見が曖昧なままに終わる(抽象的概念化)

    内省的省察における注意点

    自分の経験を“客観的に”受け止めることが難しい。
    私たちは経験・事象に対して、すばやく何らかの解釈をし、評価し、結論付けるように育てられています。生まれながら誰しもに、上手く生きていくために、効率的に処するために、と、この装置がどこかに埋め込まれているのでしょう。

    私たちはこのすばやい装置のおかげで、何が起きたのか、どんな反応があったのか、を“自分の評価を添えないで口にする”ことに慣れていません。特に焦って成果を求める人には、狙い通りにならなかったことに焦点を当てがちです。しかし、もしかしたら他にも微細な反応(例えば、お客様全員は買ってくれなかったけど、数人は箱を手に取ってくるくると回しながら眺めていた)があったかもしれません。
    この場合、具体的・客観的な事象としては、“数人は箱を手に取ってくるくると回しながら眺めていた”“〇人中、〇人が買った”です。もちろん、手に取らなかった方々の反応も丁寧に観察したいところです。

    この起きたことを丁寧に拾い上げて、その理由を考え、次なる教訓につなげていくことが、ただ速く回そうとしている人との違いを生みます。私たちは装置を速く働かせる訓練をしてきました。それ自体は悪くありません。経験学習していると言えます。しかし、この速さが“新たな学びの種を見過ごす”ことにつながりかねません。

    抽象的概念化における注意点

    例えば「キーマンを見つけて動かす」というレベルでは新たな学びになりません。みんながすでに知っているからです。これは私たちが求めている学びレベルに対して抽象度が高すぎると言えます。私は、この抽象度を高くしてしまう癖も、装置と教育の産物だと考えています。私たちは“間違いではない結論を言え”と強制されてきたのではないでしょうか。

    もう一歩、くだいてみましょう。
    「キーマンを見つけて動かす」では当たり前すぎて、「それはそうでしょー」と言われますが、
    ・誰をキーマンと定義するといいのか?
    ・そのキーマンをどう見つけるといいのか?
    ・キーマンを動かすにはどうすればいいのか?
    と分解してみると、面白い問いになります。面白い問いは、答が一つではありません。だからこそ、実践での出来事が答のバリエーションを豊かにし、ケースごとの答の使い分けが出来るのです。

    経験学習サイクルのフォーマットで伝授する

    注意点を意識しながら、自分の経験からの学びをノウハウとして後進に伝授します。
    忙しさのあまり「この場合、こうしたらいいよ」と指示命令だけをしていると、延々とその作業を繰り返さなければなりません。結果、自分の首をしめ、後進に仕事の面白さを伝えられなくなってしまいます。

    そして、このサイクルを自分で回せる後進をつくることが本来の育成のゴールです。
    きっと上司や経営層は“あなたが後進を育てられる人かどうか”を観ています。後進育成のヒントになれば幸いです。

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