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  • 2016.08.15

    二代目、三代目はボンクラ? 家族経営の研究。

    野元義久

    夏休みに実家で子供の頃を思い出した人もいると思う。
    帰省せずとも、蝉の声や照りつける陽のおかげで、他の季節よりも田舎を思い出すことが多い気がする。

    先月から、新しい学びの旅を始めた。
    “心理学の観点から家族経営を研究する会”に参加している。

    プロセス志向心理学(ユング派心理学の流れを汲むアーノルド・ミンデルが確立してきた学問)をベースにして、特に経営メンバーの関係構築を心理学から紐解いていくものだ。
    これまでも現場で使ってきたこの学問を、もっとわかりやすく、もっと誰にでも使えるようにするために学んでいる。

    日本の企業のほとんどは家族(による)経営だと言われている。
    会では事例(岡山の化学メーカー林原や賑わせた大塚家具など)を元に分析を進めるが、当事者を演じ合うことで本人たちの心理を追体験するワークもある。

    ところで、皆さんの親族はどんな仕事をされている(いた)でしょう。

    私の父はいわゆる農家。

    鹿児島・大隅地方の広大な自然では、サツマ芋、米、蕎麦、茶、果物、などが育つ。父は芋、米を作っていた。
    ※ちなみに薩摩の人はサツマ芋とは呼ばない。「唐」から来た種なのでカラ芋と呼ぶ。

    私自身も食べることは大好きで、安全で美味しい食物を育てて頂いている農家の皆さんには心から感謝している。

    しかし、どうしても農業は好きになれなかった。

    理由は二つある。

    1年中、手伝わされる。
    夏休みなどは、地域総出で順番に各家の稲刈りが続く。「休み」ではない。

    経験者でないとわからないが、稲刈りは酷だ。脱穀という工程で飛散する穂先が汗の体にはりつく。これが痒い、いや痛い。日焼けも進み、肌の弱かった私はうつ伏せでないと眠れない夏の夜が続いた。

    休めないどころか体を痛めつけられるのが私にとっての家業(農業)だった。
    体が強くはなかった母親にも重労働だったと思う。

    そしてもう一つは、ヨメないビジネスであることだ。インプットに対するアウトプットを約束してもらえない。

    鹿児島は台風の通り道で、爪跡がこれまでの地道な努力を無に(時にはマイナスに)していく。もちろん誰も自然に向かって言えることはなく、また淡々と地を整えていく。

    その場面をみて子供心に親たちの悲しみを感じることは多かった。お天道様をうらみたくもなる。そして家計も心配になる。中学生くらいになるとそのくらいはわかってくる。

    私には心も痛めつけられるのが家業(農業)だった。

    だから私の夢は「サラリーマンになる」ことだった。小学生の時、そう言っていた。固定の月次報酬が約束されているサラリーマンは夢のような仕事だ(と思っていた)。その夢は田舎を出た20歳で実現した・・が、なぜ今はサラリーマンじゃないのだろう(苦笑)

    こんな昔話を持ち出したのは、家業に対する価値観は確かに刻まれていくということを紹介したいからだ。

    事例の林原では四代目が先代の突然死で家業を継ぐ。
    継ぐ意志はなかったのに、忌み嫌っていた家業を一手に引き受けることになる。

    どこかでその境遇に反抗したかったのではないか。
    継いだ直後に起きるお家騒動にも「いっそ潰れてしまえ」と思ったのではないだろうか。

    父親(先代)は母子に暴力をふるっていたと書かれている。仕事の重圧がその原因だとしたら、そんな立場・役割・事業・環境を好きになれない気持ちもわかる。自分はそんなことをしたくない!と思うだろう。

    しかし、こんな背景もある。林原家の先祖は義により士分を自ら返還している。滅私の精神で何か大きな責任を背負うことが当然だという家風が受け継がれてきた。この家風を築いた先祖のことを、プロセス指向心理学では「ゴーストロール(現実には存在しないのに、常に強い影響を与えているあたかも存在するような役割)」として丁寧に捉える。

    四代目の林原健氏はこのゴーストロールに抑圧され、真の主体性を発揮出来なかったのだと思う。

    「二代目はボンクラが多い」と揶揄される。
    創業リーダーとの資質の差だけではないかもしれない。蓄積された苦しい経験や教えが浄化されないまま、「仕事」が持ち込まれる家庭に逃げ場がない少年期を過ごし、「やりたくない」「本心では成功を願ってない」「先代・先祖に劣等感をおぼえる」など、どこかで健全な気持ちで経営に就けない人もいるかもしれない。

    一方、血のつながりにはとてつもない安心感がある。出来れば恩恵を血筋に伝承したいという親心もわかる。この葛藤から次に進めるように貢献していきたい。

    家族経営の場合、職場や会議室で起きていることだけでなく、家庭内の関係や先祖代々から伝承されている教育内容にも目を向けておく必要があると痛感している。きっと家族経営でなくとも対立・葛藤の解決に必要な観点だと思っている。

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