小学校の卒業文集に 探偵になりたい と書いた。
もうすでにイチロー選手や本田圭佑選手のようにはなれないことが決まっていた12歳だったということだ。
しかし、
「誰かに頼られる」
「謎を探る」
「解けたら互いが感動する」
という点が今の仕事と共通していて嬉しい。
三つ子の魂…ありがたい仕事をさせて頂いている。
ブリコルールはオプティマムデザインと称し、ワークショップや研修のプログラムをパッケージ化(同じものを大量販売)しないで毎回つくると決めている。
http://brico.ne.jp/service/
毎回、本当に毎回、プログラムを考える。「同じやつを今年も」と言われても考える。手がかかる(>_<)…儲かることを最優先しない、と決めたことになる。
プログラムデザインのために、ほぼ毎回、事前に参加者インタビューをする。
私は、「探偵のようなインタビュー」を心掛けていて、最近はシリーズ完読を目指している東野圭吾さん著の加賀恭一郎刑事をイメージしている。
今回はワークショップのデザインのためにどんなインタビューをしているか、を書いてみる。
まず大切なことは「アンケートをしない」ことだ。
加賀恭一郎は「あなたが犯人ですか?」とは訊かない。自分が納得するまで、謎を探る質問を繰り返していく。だから「私が犯人です」と言われても小説は終わらない。
プログラムデザインのためのインタビューはアンケートではない。記入欄が埋まればいいわけではない。「部下が育たないのは私のせいです」と答えられて、「やっぱり本人もそう思っているから、上司に厳しい教育をしましょう」なんて発注主に報告するなら、私たちの仕事は要らない。
ではどうするか?
インタビューの目的は、「何を、どのように届けると効果的な場になるか」を考える材料を得ることだ。そのために参加者の普段の行動・言動を想定し、何をどこまで理解して(あるいは共通見解を持っていて)、どれくらい意欲を持っていて、どこまで出来ているのか、何が壁なのか、をイメージする。
要するに、“この人は職場でどう過ごしているのか?職場やお客様先で、誰とどんなやり取りをどのようにしているのか?”が絵に浮かぶまでを目指す。加賀刑事も容疑者の行動を細かく訊きながら、違和感を仮説にする。きっとアタマに映像を浮かべているのだろう。
多くの場合、発注主からはおおまかなオーダーを頂く。例えば、「部下を育てるマネジャーになって欲しい」。
でも考えてみたら、そんな大事なことを本当にわかっていないのか?
わかっていて出来ないのか?出来ないなら何が壁なのか?
具体的な行動やその成果にズレがあるのか?
自分が良くないと思っているのか、相手のせいにしているのか?
これらはアンケートでなく、対話だから掴んでいける。すると「何を届けていくといいか(≒何を省いていいか)」を決めることが出来る。
必要のないこと、わかっていること、に時間を掛けるのは誰にとってもムダである。
また、参加者特性をみて「どのように届けるのか」を探る。
ブリコルールは業種や規模や参加者の年代を選ばない。だからこそ多様な比較材料から、参加者の特徴を新鮮な目で掴んでいける。
使う言葉・テキストの文章は硬い方がいいのか?
教科書的なインプットは歓迎されるのか?
こちらからの問いはどれくらいの具体度だとワークが成立するのか?
聴覚からのメッセージを好むのか、視覚からか、身体感覚からか?
個人ワークが必要か、対話に時間を掛けると良いか?
思考スピードと論理構成をどれくらい期待して良いか?
これらを対話の中から掴んでいく。
届きやすさの調節もせず「ワークのアウトプットに不満です」というコメントを一方的にするのは卑怯だ。※届きやすければ良い、というだけでもないが。
また参加者同士の関係性にも着目してインタビューする。
参加者同士で自然に深い学びをつくっていけるほどのつながりがあるのか?
スタート時にどれくらいの場つくり・関係つくりをする必要があるかを判断する。
「集合研修の場で本音なんか開示しない。人事評価に影響するから」と言われる方もいる。このあたりはインタビューで発注主との信頼関係を探るのが効果的だが、そこを言い切れる人は少ない。微細なシグナルを見逃さないで、本当に言いたいことを言えているかを探りながらインタビューする。
効果的な学びは、安全で適度な緊張感のある場からつくられていく。
そして最後に、必ず、
「言い足りないこと、そういえばこれも言っておこう、というのはありませんか?」
と(ここだけはコロンボ的に)振ってみる。
この問いに答えている内容も貴重だが、ここで「ありません」という時の表情・口調・しぐさにも留意している。やはりインタビューで話してくれた内容がすべてではないと私は思っているのだろう。
このように、参加者インタビューを重要な材料としてプログラムがデザインされていく。
さて、次は「私が彼を殺した」を読もう(^^)