いま再び、人と組織で勝つために。
「一橋ビジネスレビュー 2016年夏号」の副題である。
私たちが掲げている「職場を、チームにする」という事業コンセプトを創るのに、大きな着想のヒントを頂いた鈴木竜太さんが書かれた「『開かれた職場』は主体的行動をもたらす」という論文や、私たちのホームページにて小野寺友子と対談頂いた石原直子さんの「日本の人事はタレントマネジメントに移行できるか」という論文など示唆に富む内容が多い。
その中で、今回取り上げたいのが、西村孝史さん/西岡由美さん共著の「ミドルマネジャーの戦略的役割」という論文。詳細な内容は雑誌に譲るとして、ポイントはミドルの役割を「組織管理」「部下育成」「例外対応」「情報伝達」と整理した上で、
1、差別化戦略とセットになった場合には「部下育成」の役割が短期的な財務パフォーマンスを高める
2、「部下育成」は、大卒新卒の3年以内の離職率の低減に影響を与える
3、中長期的には「情報伝達」の役割が財務パフォーマンスへの直接的な影響を与える
ことを見出している点だ。
その上で、複雑化・多様化するミドルの役割に対して、「競合他社よりも優れた成果を生み出すミドルの役割は「情報伝達」と「部下育成」であり、「組織管理」は競争劣位にならない程度に行い、「例外対応」は、組織内をルール化したり、部下を育成することで相対的に減少させていくことが重要である」、とのインプリケーションを引き出している。
私たちもこのミドルの役割を階層化し、「情報伝達」と「部下育成」を重視するという考え方に共感する。そして、この「情報伝達」と「部下育成」の役割が、どの企業においても必ずルーティンとして実践されるべきなのが、人事制度の運用と会議の運営という活動だと考えている。
よって、私たちはこのルーティンをきっちり行えるようになることを初級管理職向けワークショップのゴールとしている。
部下育成の観点や上位目標との接続の観点で、目標設定が出来ていますか?
報告・連絡会(≒詰め会!?)なのか、状況を打開する為の検討会なのか、何かを決める意思決定会なのか、目的や状況に合わせた会議運営が出来ていますか?参加者が当事者意識を持ったり、動機付けされた状態で会議室から出て行ってますか?
上司の意向を押し付ける、あるいは上司の意向が何も伝わらない評価面談になってないですか?
まずは、これらの問いにきっちり向き合うことが大切だと考える。
事業戦略に関して「選択と集中」という考え方が広まる一方で、ミドルマネジャーには「全方位的に色々なことをどうにかこうにかこなす」ことを求めているような状態が、今多くの企業で起きていないだろうか。女性活躍推進やバブル世代の戦力化、多様な価値観のインクルージョンなど人事の世界の新しいテーマは、職場においてリアルに対応して行かざるを得ないものが大半だ。
だからこそ、まずは、組織内ルーティンを立て直す。
いま再び、人と組織で勝つための第一歩はそこにあるように思う。